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元・経営コンサルタントの投資日記

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2008/11/03
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カテゴリ:その他
10月27日付のFT.com(フィナンシャルタイムズのネット版)のビデオ・ニュースで語っています。こちら

(FT.comに登録をしていないと見ることが出来ないかもしれませんが)

また、少し翻訳の過不足があるかもしれませんが、ご容赦を。

竹中氏.jpg

(出所:ウイキペディア)

要旨

Q日本の金融危機を経験してと今回の危機を見てどう思うか?

日本の金融危機と現在の欧米の金融危機はやや違う。日本のそれは銀行システムの危機であり、欧米のそれは金融市場の危機であるという点である。

日本の場合、諸悪の根源は貸し出し資産の不良資産化である、と比較的構造がシンプルであったが、欧米のそれはデリバティブであったり証券化であったり複雑である。

ただし、欧米は日本の失敗から政府が率先して介入するという手を打ったことは評価できる。すでに公的資金を注入したからだ。

しかし、資本注入は必要条件であっても十分条件ではない。日本の場合、98、99年と注入を行ったが、それ以降も処理が片付かず、4年程度かかってしまった。

欧米の場合も同じで、注入したがそれは政府が積極関与するというアナウンスメントでしかなく、そういった不良化・トラブル化した資産がどれぐらいあるのか、と言う点については現状わかっていない。これは非常に複雑な技術的な問題をはらんでいるものの、透明性のあるわかりやすい評価機軸(フレームワーク)が必要である。

その評価の結果、資本注入額が足りなければ、また入れればいい。底がわからないことがパニックの原因である。

 

Q現在の円高について

短期的に円は過大評価されている。これは米国市場が麻痺しているからだ。中長期的にはまた戻る可能性が高い。

政府の為替介入はお勧めできない。短期的な効果はあってもその程度だ。

為替については、日本経済は内需が弱く、外需頼みである点が問題であり、内需を刺激する政策が望まれる。

 

Q日本企業の企業業績について

これは懸念している。前回の「銀行システム危機」のときは、実は欧米中心の世界経済は比較的好調で、かつ円安という決め手があった。今回は円高スタートになっている点が前回と大きく違う点である。きっかけがない状態である。

 

Qアジアが今の欧米の混乱に貢献できることは何か

中国、日本は世界で1位2位の外貨準備金残高を誇る国である。これを活用すればいい。

また、日本は公的年金という世界最大の「SWF」(ソブリンウエルスファンド)を保有している国である。こういった資金の「少し」でも活用すれば欧米金融市場に大きなインパクトを与えることが出来るだろう。

中国とコーディネーションを伴えばなおさらなことだ。

 

日本の外貨準備資金は米国の国債に極端に偏っている。これのわずかでもシフトすればいいだけのことだ。

こういった資金をリスクにさらすことに世論の反論があるのは承知だが、金融技術の細かいところまで、政治家は理解できていない、だから反対するのだ。その金額の絶対額は小さくても十分インパクトがあって貢献できると思う。

 

Q政府ではなく民間企業(野村、MUFGなど)の今回の投資(質問者は「ギャンブル」と言っていた)については

 

こういった「Proactive」な行動は非常に評価できる。政府関係者としてではなく、一学者として今後も大いに期待したい。大胆な手を歓迎する(ただし、投資後のインテグレーションは容易ではないと発言)。

いまや各国のSWFはリスクをとりにいけなくなっている。比較的キズの浅い日本の民間金融機関の出現に期待している(注:英銀バークレイズはこのインタビューのあと、2度目の増資を中東のSWFから受けることが発表されている)。

民間セクターのこういったリスクテイクは市場に大きくポジティブインパクトを残せるはずだ。

 

Q日本も規制緩和や市場主義を取り入れすぎたから、今回の危機に巻き込まれてしまったという世論もありますが

政治家は選挙で勝たなければならず、ポピュリズム(人気取り)になることがある。今の動きをよく見てほしい。増税すると言っているが、日本経済の成長率は停滞していることに国民はこりごりになっている。政府の方針と国民の期待感にギャップがある。

政治家もマスコミもそのときのモメンタムで議論する傾向がある(少しあざ笑うかのような表情あり)が、日本人はこういった「成長戦略なき増税」に対し世論が変わってきているはずだ。

 

ざっくりこんな感じ。以下は雑感。

 

竹中平蔵氏というと、賛否両論のある「元政治家」である。以前の私の上司は保守的な人だった(考え方が北欧的な社会民主主義的)ので、毛嫌いしていた。世間的にも日本を米国に売った売国奴とか、市場原理主義者、弱者切り捨て論者など反対意見も根強い。

麻生総理は確か、小泉さんが自民党党首となった総裁選で、TV討論会で竹中氏と大バトルとなり、あわててTV局がCM中断を入れたことがあった。ちなみに当時から麻生氏は中小企業救済論を唱えていた(にもかかわらず、小泉内閣ではフルに閣僚入り!)。

 

しかし、竹中批判はどことなく、「生理的に受け付けない」、「生意気」、「税金を日本で払っていない」といった感情論が多かった記憶もある。

特に、木村剛氏と竹中氏は、当時の邦銀首脳陣や建設族議員から見れば「殺戮兵器」のような存在だったかも知れず、日本の負の側面のパンドラの箱を開けてしまった人たちだ。

 

当時、「日本に大手銀は3行程度で十分」と言った発言が大論争となり、みずほは「1兆円増資」に走り、UFJが検査忌避行為だ、と突っ込まれ三菱G入りし、りそなが餌食となった。結果的にこの生贄が幸を奏した格好となっている。

 

竹中氏の趣旨から行くと、米国における現在の時価会計の一時凍結と言うのは逆行していることになる。彼は日本の危機から一貫して、正確な評価損を把握して、足りない分を増資しろと言っている。

過剰に引き当てた分は日本でも戻り益として返還されており、結局市場評価で解決できることになる。

 

買い取り価格の決め方だが、証券化商品をどう扱うかと言う論争があるが、わかりやすい議論が重要だ。かつて、預金保険機構が破たん金融機関の貸出債権を評価するときはここでは書けないが単純だった(RCCはその値段を基準に不良資産を買い取っていた)。

単純すぎて、優良資産を買い取る銀行には「お土産付資産」と揶揄されてしまったが。

つまり、預金保険機構スキーム(金融機関は破綻させ、優良資産は民間金融機関に営業譲渡、不良資産はRCCに買取をさせるスキーム。この時の譲渡価格をどうはじくか)の場合、「要注意先」債権は優良とされ、原則引受け行に営業譲受してもらうのだが、債権評価をかなり保守的に見積もっているので、買収側に「おつり」が生じることになる(買収先の基準で評価すると、もっと評価額が高くなるため、例えば50の価格で買収し、買収後90ぐらいで評価替えできることになっていた。東京スター銀などがよく買収していた)。

 

足りなければ、増資に応じるというのは、日本の場合、官僚行政の過去の否定が出来ない、という呪縛にはまってしまい、第一小泉改造内閣で、「日本の銀行は健全だ」と言い放った柳澤伯夫氏が金融担当相の座を竹中氏に譲ってしまった経緯がある。これは欧米だとその時点でベストチョイスをする(官僚幹部も更迭される)ので、問題なさそうだ。

 

日本版SWFについて

これは非常に難しい議論だ。現在言われているのは、少し(といっても5000億円!)ぐらいから公的年金部分からか、外貨準備金のうち、米国債の利子部分程度で組成するという案だったと思う。

しかしながら、政治主導ではっきり言って、今の議論だと、建設族がゼネコンに税金をばら撒くのか、金融族議員が金融機関に税金をばら撒くのかの違いだけで、機能しないと思う。

ベストのプロ運用者を選抜する、といっているが、「ウォール・ストリートのランダムウォーカー」を読んだことのある人なら、サルでも素人でも、30年単位だと運用成績が同じである、と言う議論を検討したことがあるのか?

 

そもそも、政治側は、ヘッジファンド=悪に近いイメージで捉えており、市場パフォーマンスを上回る利回りを上げる人たちというのはこういった人たちで、主張と方針が自己矛盾している(私自身ヘッジファンドの存在は否定しない)。

 

竹中氏はこういった矛盾点や日本人の「金融成熟度」を知っているはずなのに、こういった発言をすることはポリシーウオッチャーとしていかがなものかと言う気がする。確かに理屈に適っているが、実現性や実効性が伴わない。

 

企業業績については、たしかに前回は円安だった、という点とサブプライムバブルの上昇時期に株価が底入りした、と言う点があって、個人的には日本企業の努力で変わった点と「中国特需」とでも言うべき、風が吹いていたという点が相乗できた、という実感がある(中国経済が成長していなければ、高炉メーカーでも破綻するところがあったと思う)。

したがって、自動車、機械、精密機器、電子部品以外の業種の企業の競争力の底上げとなると、電機を含めこれからが正念場であることは間違いなさそうだ。






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Last updated  2008/11/03 12:57:32 AM
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