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元・経営コンサルタントの投資日記

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2009/02/11
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カテゴリ:M&A

 

BHP.jpg
 

 

資源メジャー2位のリオティント(英豪)は現在苦境に立たされています。

決算内容が悪い、というより借りれ金の返済目途がつかない、と言われています。

 

Rioは07年5月に、カナダのアルミ大手アルキャンを約400億ドルで買収した。

当時アルキャンは同じくアルミ大手のアルコアから敵対的買収提案を受けており、「ホワイトナイト」としてRioの買収提案を受け入れました。

Rioは当時BHPビリトンがRioに敵対的買収を仕掛けるのでは、とうわさされていたため、規模を大きくしてBHPからの買収提案を逃れようとしていたといわれていました。

そしてアルキャン買収の際、期限2年ほどのブリッジローンを390億ドル(ざっくり4兆円ぐらいか)調達し、10年末ごろまでに返済を迫られています。

現在、ロールオーバーはほぼ難しく、100億ドルまでにローン残高を減額するようにRioが奔走しています。

 

自らのCFだけではとてもおぼつかないので、当然資産売却、という話になるのですが、このご時世、誰もリスクを取ろうとは思わず、すんなりと売却が進んでいません。

先日は南米コロンビアの鉄鉱石鉱山をライバルのヴァ-レに売却出来たが、8億ドル程度だったとのこと。

さらに豪州のウラン鉱山他も売却可能な資産があるとのことですが、買い手も、「バーゲンセール」でなければ買おうとしないのが現状で、事実上話が進まないようです。

 

そういった中、浮上しているのが、増資案です。誰が増資に応じるのかという点が非常に興味深いと思いますが、そうです。チナルコです(中国アルミ。国営企業)。

現在すでに、Rioの約9%の株主(そのうちいくらかはアルコアが出資)ですが、さらに200~300億ドルの出資を協議しているそうです。まもなく正式発表されるとか。

 

ちょっと強烈な話ですね。当初中国側はむしろ、出資に躊躇している、というのが情報筋の話のようですが、出資後にどのような立場を確保できるのか、ということ次第だとひょっとする可能性もあります(現在役員派遣や一部資産・権益の中国側の買収案などが盛り込まれているという)。

ひところ 「世界の資源をガブ飲み」 と言われた中国ですが、依然その 「のどの渇き」 は十分の模様です。

中国とすれば、鉄鉱石やアルミニウムに強いRioティントという有力企業にある程度影響力を持てるとすれば、それはすごいことです。

 

日本企業の動向

ここでRio出資に出向く日本企業、と言いたいのですが、どうでしょうか。三井物産が50億ドル規模の資産買収をする可能性を取りざたされています。BHPビリトンと三井物産が共同でRioティントが保有するオーストラリアの石炭会社の権益を買収しようと言うものらしいです。

一方では、BHPはチリのエスコンティーダという世界最大の銅山の権益をRioから狙っているとも伝えられています。同銅山は57%がBHP、30%がRio、10%は三菱商事・三菱マテリアルグループが保有しています。この30%相当は現在の市況でも60億ドルが相場とのこと。

 

図1.gif

 

三菱商事側は投資案件をかなり抑制しているので厳しいかも。特に資源偏重へのゆり戻りがあるといわれています(伊藤ハムとかイオンとか正反対の方向への出資が目立つ)。

Rioとしては、自らの優良資産のバーゲンセールを避けたい、そうすると中国側の出資が多くなる、というジレンマがあるようです。(敵対的買収に防衛成功しても、「食い物にする」人たちの餌食になってしまうのですね)

 

さて、今年の鉄鉱石相場はどうなるのでしょう。前年比40%カットと言われています。今ヴァ-レと中国の宝鋼集団(Bao Steel)が協議をしています。

ブラジルのレアル、豪ドルとも米ドルや円に対し大幅な通貨安となっているので、多少叩いても彼らの実質収入は困らないのではないかと思います。

 

高炉メーカー

 

中国最大の高炉メーカー宝鋼集団は2012年までに粗鋼生産量を8千万トンとするため、中国内の業界再編の受け皿になると言われています。

日本国内の粗鋼生産量はざっくり1億トンです。新日鉄のそれは3300万トン前後です(来期は2700万程度か)。

そうなれば当然、現在世界2位の新日鉄も宝鋼集団に追い抜かれ、3位に後退しますが、その生産量の差は倍以上になるので、3位と言えども規模レベルでは周回遅れと言った感じになってしまいます。

JFE、新日鉄とも次の高炉建設を急いでいますが、ブラジルで稼動し、規模はせいぜい300~500万トンなので、世界との差は広がる一方です(ただし、規模では負けるが、品質ではまだ優位にある。ただし、どこまで品質だけで業界内や対顧客へのポジションを確保できるのかは不透明)。

日本の高炉メーカーは、皆、特定製品に強い、製品特化型のニッチ企業になっていきますね(まあ、それで十分利益が出せるので、それはひとつの戦略として立派だと思いますが)。

例:新日鉄:自動車鋼板、住友金属:シームレスパイプなど。

 

ちなみに1位はご存じアルセロール・ミタルで1.3億トンとダントツ。

 

Rioティントの再編は、対岸の火事とも言っていられない状況で、経済のグローバル化の次のステップ、中国の本格的な世界経済への進出の一つのアピールにもなるでしょう。

 

一つ日本の高炉メーカーさんの名誉にかけて付け加えますと、永年の鉄冷えのせいもあって、前回の不況時に国内ではついに業界再編を完了しています。したがって、今回のサブプライムでは、高炉メーカーも直撃を受けていますが、製品のすみわけや価格コントロールがそれなりに出来ているので、電機メーカーのような悲惨な目にはあっていません(といってもこれからの鉄鉱石相場や自動車会社との価格交渉次第ですが)。

比較的体力の付いた高炉メーカーや大手銀行のように、やはり業界再編による適度な国内競争を行わないと、税収も雇用も景気も皆、貴方任せでは進歩がないなあと思います。

技術技術といっても、バフェットの言う「有料ブリッジ」が築けなければ、結局は苦しい。

 






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Last updated  2009/02/11 03:31:38 PM
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