|
テーマ:猫のいる生活(138948)
カテゴリ:ペットという家族
猫の話である。
1. 麻呂の話。 次に書く猫のルリが権造の所にやって来てから数年後、もう一匹欲しくなり我が家にやってきたロシアンブルーのオス猫である。 ペットショップからやってきた10日後くらいに、ルリのかかりつけの獣医さんの所に連れて行った。 あちこち診てるうちに表情が曇っていく獣医さんに血液検査で確認した後に言われた。 『この猫はFIVという猫のエイズにかかっている。恐らく助からないと思う。』 今いろいろネットで調べてみると『数年生きる事ができる』とか『ウィルスを持っていても長年生きられる』とか書いてある。当時は治らない病気だったのか、それとも発症すると死亡するのか、詳しい事は覚えてないのだが、とにかく早くて1ヶ月、もって半年と言われた。皮膚を通して感染するらしく噛み付いたりするとうつるらしい。 この世に産まれて来て10週間目。権造の所にやってきて10日間ですでに家族の一員になった。ルリはまだまだ慣れなかったが、後を追いかけて一生懸命着いて行く姿はとても可愛かった。 とりあえずルリと離す事にした。一緒に遊べる仲間のはずだったのに。 恐らくペットショップで感染してる猫に噛まれたか、親猫から貰ったかのどちらかだろうと言う。という事は、あのペットショップの猫達の中に他に感染してる猫が居るのかもしれない。一応知らせておいたほうがと思いペットショップに行ってみた。 向こうの対応はこうだ。 『リターン(返品)したいのなら30日以内だから全額返すし、エクスチェンジ(交換)したいのなら好きなのを持って行け。』 こんな所だから麻呂は病気を貰ったんだろうか。ビバリーセンターという大きなモールの中の立派なペットショップなのに。 確実に死ぬと言われた麻呂をどう世話していけばいいのか。次の週にもう一度連れて行って獣医さんに相談した。 『アナタは全く考えていないようだけど、安楽死という選択もあるとだけ伝えておく。』 そう言われるまでそんな選択があったなんて思いもしなかったしまだまだ普通の元気な子猫にしか見えなかった麻呂。 しばらくしたある日、エサをあげようと持っていったらこっちに飛んで走ってきてその途中でコテっとこけた。それが歩いた麻呂を見た最後の瞬間だった。 その日を境に全く歩けなくなり『看護』の時期に突入した。 一日に2回は抱っこして外に連れて行って一緒に日に当たったり風に当たったり。毎日何度もトイレの砂に入れてあげる。這って付いて来ようと必死に後を追ってくる。食欲もある。安楽死は考えられない、と伝えたら、獣医さんはじゃあ最期まで一緒に面倒みようと言ってくれた。途中で気が変わったら(安楽死について)またその時に相談しようとも言っていた。毎週1度、様子を見てもらいに連れて行き、注射や薬などの料金だけにしてくれてて良心的で献身的な女の先生だった。 ある日、いつものようにトイレの砂に連れて行き中に置いてあげたら突然ものすごい勢いで砂を食べだした。ビックリして引っ張りあげたらギャーギャーものすごい声で鳴く。オシッコが固まるタイプの砂だからお腹の中で固まったりしたらとんでもない事になる。すぐに獣医さんに連れて行って様子を話すと、『○○のメーカーの砂?もしかして。FIVの猫が食べたがるって聞いた事がある。』との事。。。お腹の砂らしいものはその後ちゃんと出たようだったが、砂も他のに変えしばらくした頃についに前足もだんだんと動かなくなってきた。最長余命宣告の6ヶ月頃である。 その頃から排泄も自分では出来なくなり、獣医さんに教えてもらった通りに出してあげる。当時一緒に住んでいたルームメートにルリの世話をお願いして権造は自分の部屋で麻呂にかかりっきりだった。時々ふと麻呂はこんなになっちゃって幸せなんだろうかと思う事もあったが、とにかく食欲だけはある。ドライフードが食べれなくなり缶のフードも食べれなくなりこの頃は獣医さんの所から買ってくる栄養バランスのとれたドライフードをミキサーで粉にして人間の赤ちゃん用の粉ミルクと離乳食のシリアルの素と混ぜて温めたものを獣医さんに貰った太目の注射器であげていた。動けなくなってもガツガツ注射器に噛み付く勢いで食べる麻呂。相変らず散歩も続け毎週病院に行く。 8ヶ月に近付いてきたころ、とうとう食欲が目に見えて落ちてきた。あげた物を吐きはしないが欲しくもないようだ。食べないから出るものも出ない。ちょっと前からお腹に水が溜まる事があり時々病院で抜いてもらっていたんだが、獣医さんに『大丈夫?(権造が)』と聞かれても『食欲あるうちは生きる力があるって事だよね。』とまだまだ世話を頑張ると言っていたんだが、食欲が落ちてきてからの看護は本当に辛かった。水分補給も兼ねて水っぽいエサを作って回数を増やして少しずつゆっくりあげる。仕事に行ってる間に死んじゃったらどうしようとそれだけが心配でルームメートにも協力してもらい夜も何度も起きては様子を見続けた。 もう長くない。明日死んでも不思議じゃないと獣医さんに言われたので仕事も休みを貰った。 2日目。朝起きて天気が良かったので死んじゃう前にもう一回外に連れて行ってあげようと5分ほどだけ日陰で抱っこ。粉ミルクと水は少し飲ませれば飲むが後は何もいらないみたいだ。午後になったら明らかに様子がおかしくなってきた。ヒトで言えばうわ言を言ってるかのようにウニャーウニャーと奇妙な声をあげる。見てれば分かる。意識がおかしくなってきてるのだ。獣医さんに電話するともう戻ってくる事はないから安楽死させるかどうか、と聞かれた。様子はおかしい。権造の事を分かってるのかどうかももう分からない。 その場で返事が出来ずにいると『何時でもいいから電話して。』と自宅の番号もくれた。 どうしていいのか分からない。もう逝かせてあげたほうがいいのかもしれない。でも怖くて決断できないのだ。『殺す』という事に対して。 友達に電話しようかと思ったが、誰かに『もういいんじゃない?頑張ったんだし。猫も苦しんだら可哀想だよ。』なんて言われたら病院に連れて行ってしまうかもしれないと思うと電話も出来ない。 どうしたらいいか分からずに自分のベットの上でウニャーウニャーと鳴き続ける麻呂を毛布でくるんで抱っこしていた。 すっかり暗くなった頃に、静かになったな、と思ったら、ふーーーっと長いため息をついてそのまま権造の腕の中で死んでしまった。生後8ヵ月半。 初めて文字数オーバーしたので、途中で切る事にする。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ペットという家族] カテゴリの最新記事
|