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2009年02月09日
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カテゴリ:ペットという家族
2. ルリの話。

ボイルハイツに住んでいた貧乏時代、わざわざこんな時に猫飼わなくってもと友達に言われながら権造の所にやってきた。貧乏だから誰かを養って励みにもなったし、アパートに帰って待っていてくれる誰かが居るというのは本当に心が休まるものだった。途中で麻呂の事があり、半年ちょっとは人任せで同じアパートに住みながらも一緒に寝ることもなかったんだが、それ以外はずっと一緒に過ごしてきた。


マイアミに引っ越す時は飛行機で一緒に来、作造と付き合い始めて一緒に暮らすようになってからもルリはずっと一番の家族だった。気性が激しく病院嫌いだったが、権造の布団に潜り込みゴロゴロ喉を鳴らしながら一緒に寝たり、肩の上が好きらしく権造の肩にしょっちゅう飛び乗るので肩がいつも爪の引っ掻き傷だらけだったり。

ルリはずっと健康で注射に行ったり去勢手術を受けた以外はそんなに獣医さんに世話になることもなかったのだが、9歳になる頃に腎臓を悪くした。
マイアミに来て病院嫌いの為、いろんな獣医さんの所を転々とし、やっと辿り着いたエジプト人の先生の所で世話になっていたんだが、どうやら良くないらしい。年齢も年齢だし一応覚悟しておいたほうがいいと言われ、ペットフードなんかに気を使いながら時々検査に通う毎日になった。

麻呂の時と同じで最後の方はお腹に水が溜まりやっぱり何日かおきに水を抜いてもらいに通う。そしてやっぱり食欲が落ち、同じように注射器を貰いご飯を作ってはあげるようになる。

完全な家ネコだったので外には出した事はなかったんだが、ある日窓を開けているとしきりに網戸を引っ掻いて外に出ようとする。外に何かが居る訳でもなくただただ外に出たいらしい。3日間ほどずっと窓を引っ掻いてずっと外をじっと見ていたんだが、それが終わったと思ったら急に体調が悪くなってきた。
きっと家の中や権造の前じゃなくって何処かに行ってしまってそこで死にたかったのかもしれないし、動物の本能みたいなものだったのかもしれない。
ロスに居たころうっかり権造と一緒に外に出ちゃったようで気付かずに権造が戻ってきたら権造のアパートの真下の駐車場の隅で動けずにずっと権造が探しに来るのを待っていたことがある。そのくらい臆病な猫なのだ。
でもこの時は出て行っちゃったら絶対に帰っては来ないだろうな、、と確信した。

体調が悪くなると共に今度はベットの下から全く出てこなくなった。
薄暗い所に居たかったのかも知れないが、暗いところというのがすごく体に悪そうで権造の勝手な考えにより端っこの角にくっつけておいていたベットをずらして少し明るくなるようにした。ルリのベットも水のみのお皿もいつも寝ていたお気に入りの毛布なんかも全部ベットの下に移動。ご飯をあげる時はフレームと床のカーペットの隙間40センチくらいの所に権造が注射器を持って潜り込む。最初は権造が潜り込むと嫌がって飛び出たりしていたんだが、そのうち動かずベットの下でじっとするばかりになってきた。

水を抜きに行く時にやっぱり先生に相談してみる。
痛かったり苦しかったりしてるんだろうか。
多分、痛かったり苦しかったりはするんだろう。それでベットの下に入ったりするんだろう、と先生は言う。
この先生は飼い主の安易な安楽死には反対しており、出来る限り説得し、ずっと自分の患者であった動物達以外に持ち込まれた場合はなるべく他の病院に行ってもらっているとスタッフの人から聞いたことがある。重病の場合、苦しむ症状によっては飼い主と話し合い安楽死させているようで、権造も一度安楽死させた直後の飼い主を待合室で見たことがある。泣きながら出てきた家族全員の後からやっぱり涙を浮かべながら出てきた先生。権造達がその後だったんだが、しばらく待ってくれ、と15分ほど待った。
麻呂のいきさつも話したから飼い主としての権造も分かってもらっている。
そんな先生だから向こうから『安楽死』については特に言ってこない。
痛かったり苦しかったりするんだったら私に何をして欲しい?と聞いてくるので、何かそういうものを和らげるような薬があったら欲しいというと飲み薬をくれて、それでもひどい様なら注射してあげるから連れてこいと言われた。

飲み薬をあげ、注射器でご飯をあげる毎日。
それでもやっぱり衰弱していく様子は手に取るように分かる。言われなくても残された日が少ないというのは実感できて、作造は呆れていたが ルリが出てこないのなら権造が行こうと権造もベット下40センチの隙間で寝ることにした。
枕と毛布を持ち込み、夜中に何かあったときにすぐ様子が分かるように懐中電灯も持ち込み、横で寝始めて数日後の夕方、息が荒くなり苦しそうになってきた。
先生に電話してみる。権造がもう多分ダメだと思うと言うと初めて安楽死する気があるかどうか聞かれた。正直に怖いから決断できないと言うと、それじゃそのまま看取ってあげた方が絶対に後悔しないとハッキリ言われた。どちらにしても数日前に見た様子ともうダメだと言った権造の勘からして、明日には逝ってしまうだろうと。苦しんでも苦しみはもう長くはないだろうから傍を離れずしっかり見てあげろと言われた。

権造も先生も思ったとおり次の日の早朝にルリは麻呂と同じようにベットの下の権造の腕の中で死んだ。9歳4ヶ月。ネコの寿命って種類によっても違いはあるのだろうが、もっともっと生きていて欲しかった。

麻呂はロスに居たころの彼氏の家の庭に眠っている。
ルリはもも造やここ造や本家が遊ぶ庭の隅に眠っている。


3.『ジュルのしっぽ』の話。

友人が猫ブログを書いていて、毎回読むたびに友人の猫達への愛情を感じるのだが、そのブログで紹介されていた『ジュルのしっぽ』というブログ。
これを書いている女性とそのダンナさんは現在『犬猫の殺処分方法の再検討』を求める署名運動を行っている。

日本では二酸化炭素ガスを使って動物の殺処分がされているらしい。
が、子猫や子犬といった呼吸器が未発達な幼生や胎児の場合、ガスでは『死に切れず』にかなり苦しんだりする場合もあるのが現状らしい。
そしてそんな子猫や子犬を含め年間処分される30万匹。

麻呂もルリも結局最期は病気で苦しんで死んだ。
こういう動物に施される『安楽死』とは詳しくは知らないが麻酔や筋肉弛緩剤といったものなのであろうし、『安らかに』逝かせてくれるのだろう。
それでも、権造は怖かった。何が怖いのかと言うと自分が決断を下して結果として家族の一員だった者の命を奪い『殺す』という事だ。
麻呂にしてもルリにしても、権造が下した決断で幸せだったのかどうか分からない。苦しんだのには違いないし、あれでよかったのか、なんて未だに分からない。安楽死させてあげたほうが楽だったのかもしれない、と思ったりもしたが命を奪うのは怖くて出来ない。
権造の腕の中で死んでいった小さい2つの命はとても重かったのだ。

こういう殺処分の話はニュースで見たこともあったし、記事で読んだ事もあった。
心が痛んだが、家族以外の場所で起きている事であまりにも無関心すぎた。

この『ジュルのしっぽ』を読んだ時に、急に麻呂とルリの事や、過去に見たニュースや記事がフラッシュバックして泣けてきた。だから署名した。
その位、この夫婦は時間をかけて専門的に調べ分かりやすく書いてくれている。

一度是非読んでください、『ジュルのしっぽ』
(リンクフリーとあったので勝手に使わせてもらいます)







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最終更新日  2009年02月09日 14時42分57秒
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