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穏やかな爆弾

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教材のビデオが、かなり不穏な出来栄えと
前回の日記でも書きましたが・・
『緊急時の対応法』と言う
ちゃんと学習していないと
いざって時に、人命の危険に伴う授業に於いても
そのとち狂った製作者の意思は反映されっぱなしでした。

再生ボタンを押すと
ブラウン管の中に二人の人物が登場。

この二人が、救助者と要救助者に扮して
誤嚥、骨折、火傷などの緊急時の対処法を
実践して見せてくれる訳なのですが・・。



何故・・。



救助者役の講師が、頭の禿げ上がったおじさんに対して



要救助者役が、若い女の子なのでしょう?



恐らく、その講師の方は
その道のプロフェッショナルで
実際の人命救助に携わり
何人もの命を救ってきたのかも知れませんが・・。

安っぽいジャージに身を包み
意識もなくだらりと倒れている若い女の子に
脂ぎった中年オヤジが覆い被さっている様子は・・。



ちょっとしたマニア向けのビデオです。



教材ビデオなのに、この配役。
製作者の悪意をひしひしと感じますね。

ホームヘルパー2級課程習得中のまぐろです。
こんばんは。
今日は少し時間を巻きもどして
その準備段階で起こった出来事を紹介いたしたいと思います。




実習を始める前に配られた「必ず用意していただくもの」の項目に

『エプロン』

そう記されていました。


勿論、妙齢の男性である僕はそんなもの持ってるはずがありません。

なければ買い揃えなければならないのですが・・。

しかし・・。

往々にして女性物を、野郎が買いに行くのは

少なからず抵抗が付き纏うもの。

エプロンも同じで

かなり勇気のいる行為なんですよね。


まずは何処に売ってるのかも分かりませんので
主婦歴30年の母に尋ねてみると
「普通にデパートに行けば売ってるわよ。」とのこと・・。

実習日まで日もなかったことですし
さっそく買いに行ってみました。
一人で行くのは、心もとないので
中学のときからの幼馴染(男)強制的に同伴します。

「死なば諸共」って言葉が頭を過ぎりますね。

一口にデパートといっても
なかなかどうして、広いものです。
まずは、エプロンの所在を突き止めなければなりません。

インフォメーションセンターに赴き
案内係の綺麗なお姉さんに尋ねてみます。

「え、え、え、エプロンは
 ど、ど、ど何処ですか?」

変にどもるから気持ち悪さは二乗。

そんな僕の心境など知ってか知らぬか
案内のお姉さんは無情にも
最も結界の濃い部分を指差してくださいました。



「婦人服売り場」



ま・・ますます、入りにくい場所だ・・。

一瞬、そのまま踵を返して逃げ出そうかと思いましたが
結局、何処に行っても恥ずかしい思いをするのは同じなので
意を決し、柔和な雰囲気でデコレートされた
婦人服売り場とやらに向かいます。



時は折りしも「母の日感謝デー」とかで

その一角は、色取り取りの

華やかな飾り付けがなされていました。




そんな中に・・野郎の二人組み・闖入!!




平日の昼下がりです
勿論、周囲数メートル四方に男性の影なんて見当たりません。

ああ・・場に馴染めない。

なんだか、屋内だと言うのに
向かい風に向かって歩いているような
抵抗感が、僕の足に重たい枷を掛けて行く手を阻もうとします。

重厚な空気の層を、一枚一枚剥がしながら
柄もののワンピースの渓谷を潜り抜け
やっと辿り着いたエプロンコーナー。

「いつも頑張っているお母さんに・・」と
母の日のプレゼントを探しに来たのか
なんだか妙に、子供の数が多いのが
羞恥心のボルテージを上げるのに、一役買っていました。

赤面しながら、男性が来ても恥ずかしくない
質素で落ち着いた柄のエプロンを選び出す僕。

さて・・。

ただ単に、エプロンを選んで買っていくだけなら
妙齢の男性でも
「新妻にプレゼントを贈る新婚夫」だの
「ママに感謝の気持ちを提示するマイホームパパ」などを演じれば
恥ずかしさも幾分か紛れ様というものですが・・

現実はそれを許してはくれません。

そうです・・。

これを身に着けなければならない僕は
自分の体に合うのか、試着してみる必要があるのです。

試着室でこっそりと・・って訳にも行きません。
何故ならココは婦人服売り場。
怪しい男性が試着室に入り込み
何やらゴソゴソとやっていれば
やんごとなき状況になってしまうことは請け合い。

仕方なく・・
子供達、お母様方たちの好奇の目に曝されながら
婦人服売り場の片隅で
エプロンを着てみる三十路の初夏・・。
それほど遠くない夏の空に、入道雲が泡立っている様子が
僕の頭の中に広がり、現実との遊離を薦めています。

・・・。

・・・。

・・・。

こんな時には、突発イベントがドミノ倒しになるものですね。

はい・・このエプロン。
背中でボタンを掛けるようになっていますね。
ぶきっちょで身体の固い僕は
自分で止める事が出来ません。

再び、あの言葉が頭を過ぎりました。

「死なば諸共」

同じくありえない状況下に置かれ
隣で、夏の海で細波を聞いている友人を
現実世界に引き戻し
涙ながらに懇願して見せます。

「うしろ・・止めてくんない?」



婦人服売り場に野郎二人がウロウロしているだけでも

奇妙な雰囲気を周囲に撒き散らしていると言うのに・・。

片やエプロンを着て御満悦の三十歳。

片や甲斐甲斐しく背中のボタンを掛けてやる三十歳。

何処から見ても立派な

変態カップルですね・・はい。



エプロンが体に合うと分かるや否や
僕らが脱兎の如く
その場を後にしたのは言うまでもありませんが・・

その数日後。
某ディスカウントショップにて
同じエプロンが、「作業服売り場」なんて
物凄く買いやすいところに置いてあったのを見つけしまい
がっくりと膝を落としたことを
あわせて御報告しておきます。



※ 『step4-体位姿勢交換補習』に続きます。





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Last updated  Sep 3, 2004 08:07:32 PM
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