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カテゴリ:声がなくなるまで
何となく楽しい夢に揺り起こされ
時計のアラームよりも五分早く目覚めた朝。 いつものように まだ明け切らぬ朝靄の中を、愛犬と一緒に歩を進めます。 お元気な老夫婦の散歩と擦れ違って 目を細めたり 同じく犬を連れた御婦人と 挨拶を交わしながら道を譲り合ったりするだけで 何だか、嬉しい・・。 弾む気持ちで軽く飴とかけっこなんかして 帰宅したのは午前六時。 少しばかり流れた汗を まだ身体の奥で燻っている寝起きの倦怠感と供に 熱いシャワーで流し去ります。 朝食は、焼きたてのトーストにオレンジのマーマレード。 色彩豊かに盛り付けられたサラダが目に楽しい。 コーヒーの香りを一頻り愛でたトコロで ふと気付きました。 ・・なんて穏やかな朝なのだろう。 取り分け、特別な出来事が起こるわけでもなく こうして緩やかに流れる時間の中で 日々の営みが過ぎ去って行くのって なんとなく、小さな幸せに触れた感じがして 悪くないもの・・。 ほら・・ 「何処に行くの?」と洗面所まで ついてきた飴が足元に じゃれついてきて 歯ブラシを咥える僕の顔を見上げています。 こういうのも、穏やかで小さな幸せ。 そんな風に感慨に耽っていると・・ 自分の咥えてる歯ブラシの色が いつもと違うことに気付きました。 ・・親父の歯ブラシだ。 吐瀉物を撒き散らせながら、絶望の淵に墜落していく間際に 小さな幸せのガラガラと崩れ落ちる姿が はっきりと見えました。 どうやら僕には、穏やかな朝なんて 一生、訪れないようです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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