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里見八犬士☆犬坂毛野の夢

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里見八犬士☆犬坂毛野

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2005.08.15
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 あれは確か真冬の只中の、とても寒くて心迄もが悲鳴を上げ、そしてそれを堪え切れずに唇を噛み、僕の涙雨さえも凍ってしまいそうなあの夜の記憶。

 己の過酷すぎる運命に抗する手段がピアノを弾く事であり、そしてショパンのエチュードの麗しの旋律を奏でそれに酔い痴れる事が唯一の幸せだと確信した僕は、憑かれた様に難解な楽譜に挑んだ。然し余りにも未熟な少年にとってこの技巧はその少年の孤独を更に深くしてしまった。然し最初はエチュードを聴いて夢心地に成り、この24の麗しき練習曲に大いに恋した筈。そしてあの日、近所の夕闇の海を見つめて心から弾きたいと願った筈.....。

「あーあ、どうやって弾きゃいーかわかんねーじゃん。」そう、僕にとってこれは、どうやって生きれば良いか解らない、どうやって酷な境遇に打ち勝てば良いか解らないと言う事と同じであり、そしてそれは僕の魂の悲鳴だった。

またこれは恋愛に例えられるだろう。少年が一目惚れである綺麗な子に心奪われ恋煩いをしてしまい、その対処の仕方も解らず、また告白も出来ずに孤独の迷宮を彷徨い続け、そしてその子が高嶺の花である事を知り更に傷付く......。

 そんなある日、僕は友達と呼ぶには未だ躊躇いのある級友にゲームをしないかと誘われた。そう、男の子の血を騒がせる格闘ゲーム。そしてその誘惑に負け僕はその子と格ゲーに夢中に成り、そして大いに発散しその子に「また一緒にしよう」と言われ、孤独な僕に友達と呼べる存在が出来た事に僕は少し胸を熱くした。そしてその晩以来、僕はショパン弾きへの夢を心の隅に追いやり、その子と毎日の様に格ゲー愉しんだ。病気がちで通院ばかりの孤独な少年に出来た待望の友達。また彼は今迄誰もしてくれない事をした。そう、一緒にお菓子を食べ、ジュースを飲む事。その「誰かと一緒」という甘い言葉に飢え、病と孤独に心を裂かれた少年にとって、昨今言われる「無理して友を作るな」なんていう言葉はまるで寝言だ。そう、地獄に生きた少年にしか孤独の痛み、そして友達の有り難味なんて到底解る筈もないのだから。然し、序所に鍵盤を触る時間は減って行った。

勿論ピアノという夢を叶える“魔法の道具”への想いが僕の心を強く支配していたから、それでも毎日練習は続けた。それにもう物心が付いているこの少年には自負があった。「ボクは好きだから弾いている!」という叫びと共に。

然し乍らゲームの面白さ、そして僕を心から受け入れてくれる存在との出会いは、確実に技巧の練習に影響した。そう、特に半音階を弾いたり転調が頻繁に現れる曲は、やったりやらなかったりではダメで、無論週に2、3回先生に短時間の助言を受けるだけでは絶対に習得不可能なのだから......。然しそれはただの我侭であったと決め付ける事は、この痛い程の孤独を背負う少年を想うと「大人の僕」には到底出来ない。何故ならば少年時代の親友は何よりも大事な存在であり、そこで培った“情”が少年を大人に変えるのだから......。

誰もピアノ弾けなんて言わないのに、そして、周囲の冷たい誰もが異口同音にやめちまえと言う。だから煉獄の如き環境でピアノを弾くメリットはまるで無く、かえってあの子と一緒にゲームをする事が救いの亡命に成っただろう。

然しある日思春期に足を踏み入れる頃の僕に異変が起きた。そう、ピアノへの夢を裏切りゲームに酔い痴れる事への炎の如き罪悪感が僕を襲った。そしてあの子が何を言おうと上の空、そしてあれだけ胸を熱くした格ゲーがそうで無く成った。その時僕は、あの日あの夕闇の海岸での想いが胸を過った。嗚呼、僕の夢はピアノを弾く事なんだ。例え遊びを断っても練習を止めちゃだめだ!

再び僕は以前の練習生活に入った。然し遊びたい盛りの少年に孤独な練習は辛い。また一度親友と言う最大の味方、そして逃げ道を作ったこの少年は、矢張り難解な楽譜の練習を離れ、自然と逃げ道へと迷い込んだ。そう、僕は人一倍寂しがり屋であったが故、寂しいという気持ち、そして親友という甘い言葉に誘われて再びあの子と遊ぶ時間が多くなった。そんな時、あの子は意外な事を口にした。僕のピアノを聴きたいという、未だ誰もかけてくれなかった、そして僕が鍵盤を触る様に成って一番かけて欲しかった一言が、皮肉にもショパンのエチュードの練習をスポイルする張本人から聴かれたのだ。僕は胸が熱くなりそして二つ返事でこう言った。「最高の曲を聴かせてあげる」と......。

男の子にとって、親友から己の力を認めて貰うほど幸せな事は無いと、僕は今心から思う。それ程“あの一言”は、僕の魂が燃え盛る炎の如くにしたのだから。そう、あの親友の一言以来、僕は難解な楽譜を何時間練習しようともう砂を噛む様な思い、そして絶望的な孤独感は消え去って行った.......。

僕から孤独が消えたと思ったら、彼を“唯一の親友”と心から想えて来た。

最高の演奏をしたい。たった独りの、そして生まれて初めてのリサイタルのために、また、僕のファン第1号の“あいつ”のために.......。

僕の逃げ道だったあいつが、逆に僕の逃げ道を塞いでくれた。

また、孤独で死にそうな僕の唯一の逃げ道だったあいつが、
僕の魂に新たなる熱情を注ぎ込んでくれた.......。

だから今のピアノ弾きとしての自分があるのはあいつの御陰だ。
そう、親友がいなければ運命に心が押し潰され、
そして、親友に飢え甘えていた僕をいきなり鼓舞し目標を与え、
孤独に打ち勝つ事の出来る大人への第一歩を歩ませたのだから。


だから僕はあいつに聴かせるために、死に物狂いで練習した。

そう、あいつを失望させないために、心から感動して貰うために、
僕をあの日誘ってくれた恩返しを心からするために.......。

そして、人前で初めて弾く曲を僕は必死で探した。

遂に見つかった。それは、ベートーヴェン「ムーンライトソナタ」だった。


To be continued.....





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最終更新日  2005.11.22 00:05:37



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