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里見八犬士☆犬坂毛野の夢

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2005.08.28
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~19XX年の春の温かい日差しが身に沁みたあの日の夕方、
未だ幼さの残る表情の二人は、公園で西陽を一身に受け、
眩しさに戸惑いながら、互いの夢をずっと語り合った。
RPG好きの僕は、あいつが僕の騎士に想え、
とても嬉しかった......。

そう、“自由への逃走”を開始した勇者志望の少年にとって、
“本物のナイト”だったんだ.....。~


 その日僕は家に帰りたくはなかった。そう、家に帰っても待ち受けるのは苦痛と絶望。だからずっとこのまま二人でいたかった。そして僕に“あの言葉”をかけてくれたあいつと離れるのが辛くて、日が暮れても未だ僕は“未だ遊ぼうよ”と言った。そんな時あいつは困った顔をして、よく僕にこう言ったのを覚えている。

 僕の“未だ遊ぼうよ”という言葉が“心の悲鳴”だという事を十分察している、とても思い遣りのある頼もしいあいつは......。

 「・・・、ピアノの練習は、ちゃんとやってんの?」

 それは僕にとって辛い一言だった。そう、彼はこう言いたかったのかも知れない。『例え帰りたくもない家に帰ってピアノの練習をする事は修羅の道を歩むだろうな。でもね、俺は・・・の弾く月光が聴きたいんだよ!だから勇気を出して家に帰って、歯を食いしばってでも練習しておくれよ!きっとこの練習は未来の・・・を幸せにするよ!そして、それは俺が一番望んでいる事だから......。』
僕に“千尋(せんじん)の谷”に突き落とすこの一言は、常に僕を再び孤独へと追い遣った。そう、日が長くなったから一緒にいられる時間は延びたと言っても、時計の針はその想いを常に断った。そしてあいつの家の前で「じゃあね」と言う僕は、明日学校で会う迄の時間が途轍もなく永く想え、僕はまたあいつを振り返った。
 
でもあいつは知っていたんだ。きっとあいつが僕を引留めれば引留める程、僕の練習時間を減らす事を。だから二人でゲームに嵌っていた時、僕が時折上の空に成りピアノの事を想ってるのを察し、「・・・の弾くピアノ聴いてみたいよ!」って言った筈だし、そして再び僕の練習時間を心配してくれたのだから。そして僕の苦痛と絶望を知っていてもどうする事も出来ないあいつもとても辛かったと想う。勿論年端の行かぬ子供には孤独な少年を救えない。然しあいつは知っていた。僕を幸せにする物はピアノであり、また僕の演奏を誰かに聴いて貰い感動を与えるという夢を。あいつの断腸の想い、幼い僕には痛いほど感じられた。だから僕はこの想いを裏切って、“困った顔をしたあいつ”を決して苦しめたくはなかった。
そう想ったら、何故か周囲の悪口雑言なんて戯言の様に想えた。あの僕の幸せを願った“重い一言”を反芻すればする程......。

 僕は決意した。『どんな事をしても、この部屋で二人だけの“ピアノリサイタル”を実現してーよなぁ!だからあいつの気持ちに応えなきゃ!そしてぜってー喜ばしてやりたいなぁ!だから毎日ちゃんと練習しなきゃなぁ!そう、練習してりゃあいつも喜ぶし、それにずっとあいつもここに来てくれるんだから!そう、ピアノリサイタルをずっと、ずっと開いてきゃいいんじゃん!』

 そう想いたかった。そして僕はそれがずっと続くと想っていた。然しこのモノローグこそが僕自身をインスパイアしたのだし、それに僕の勇気を呼び覚ましたのは、紛れもなくあいつの言葉だ。だからそう想うと僕は、心に“刺す程の痛み”を覚える環境にいても、実はとても幸せだったのだと想う。そう、ナイトが僕の心の中迄入り込んで“苦痛と絶望”を殲滅してくれたのだから。そして“ファンタジー”の少年勇者を演じられる僕は、ナイトのあいつと共に、同じ物語の世界に生きられると心から想えたから......。

 だから僕はこれらの事を常に想い乍ら、例えどんな事が起きようと必死で鍵盤を触った。また今迄の“闇雲に弾き捲くる”練習とは違い、ノートにその日どれだけ練習したか、そして習熟度を記し、また、明日に何を練習してどの欠点を克服したいかを記す事を習慣化した。そう恰もこのノートは“向日葵の成長日記”の様だった。またこのノートに“その日の想い”を一杯書いた。それを書き続ける事で僕の不安や迷いを客体化出来、また“来るべき日”への想いを“具体的な目標”に昇華させるに貢献した。またそれがあいつへの誓約文にも成った。そう、僕はいつも想いを綴りながらあいつにこう叫んだ。『ちゃんと練習やってんじゃん!』と。

 
『あの日、僕は別れ際にあいつを振り返ったんだ。
 僕はずっと目で訴えていた。
 独りにしないでおくれと。
 でも僕はあの日少し強く成った様な気がする。
 そう、ここ迄独りで出来たんだから!
 たった独りで、強く想うだけで、
 僕自身に勇気が沸いてきたんだ!
 だからきっと“あの日の痛み”が、
 この勇気に変わったんだろう....。
 僕の、“あいつを振り返る痛み”と、
 あいつの“僕を突き放す痛み”が。
 この“二つの痛み”こそが、
 少年に“勇気と忍耐”を教え、
 そして少年を大人に変えるのかもなぁ。』

 あの日を想い出す度に、僕は心からそう想った。
 またこのモノローグが僕の心に溢れている事は、
 そう、あの日の少年が幸せだった証拠なんだ!

 僕にもう迷いは無かった。また計画的な練習に於いても、少しずつ闘志も沸き出でて、それが僕の心の“燃え盛る炎”と成った。

 そして迷う理由も無かった。そう、僕には“最高の観客”であり“掛け替えの無いファン”でもある“あいつ”がいたのだから。
 
 この“燃え盛る炎”は、決して消えなかった。だからどんな事でも可能だと想った。そう、まず第一にした事。“月光”の名盤の所謂“耳コピー”。同時に楽譜も目で追い乍ら、もう寝ても覚めても聴いただろう。勿論ベッドの中でも聴いた。そして夢の中に迄、あの主題は出てきた。未だ見ぬヨーロッパの風景と共に......。

 また僕は夜空を見上げ、星座を覚えるのが好きだった。だから練習に疲れた夜には、必ず夜空を見上げ、身体に沁み付いている旋律を最初から最後迄夜空に向けて弾き続けた。そう、実際暗譜するには、総て旋律が心に録音されていなければならない。また楽譜の総ての音符を視覚的に暗記するのでは無く、旋律を旋律として、そう音として血肉化できなければ聴覚に全面依存出来ないし、また速い曲などは尚更だと想ったから。だから僕は夜空を見上げ、何度もそれを完璧に再生する訓練をした。月の明かりのみに照らされ乍ら。

 ある日、僕の弾くベートーヴェンの“ムーンライトソナタ”第一楽章を、初めて暗譜で弾く事が出来た。弾き終えた瞬間、僕の心から無数の棘が取れて行くのを感じた。この悲しげな嬰ハ短調のゆったりとした主題こそ、正にあの日の僕の“心の悲鳴”だと想った。だからあの日、“ピアノリサイタル”の曲目を選んだ時、この悲しげで、然しどこかに光が差している“月光”を選んだのだろう。

 『嗚呼、この光こそ、あいつの言葉だったんだ.......。』

 
 僕は今でも想うのは、この少年は“ただ寂しかっただけ”だったという事。別に独りでいたかった訳じゃないし現にあいつと色々な“悪戯”もやった。そう、お互いとてもやんちゃだったと想う。

 それでも僕等には途轍もない違いがあった。そう、あいつは光を与える側で、僕はそれを受ける側だった。それは、あいつが誰よりも優しさが満ち溢れていたから可能だった。そして僕は誰よりも優しさに飢えた存在だったから、まるで喉の渇きを癒やすかの如く、あいつの光を心行くまで受け続けたのだろうと想う。

 
 19XX年のある初夏の夜更け、漆黒の夜空に“春のダイヤモンド”を形作る“うしかい座のアルクトゥルス”、そして“乙女座のスピカ”を目で追い乍ら、僕はずっと月光の旋律を奏で続けた。



『僕はちゃんと練習やっているよ!』とあいつに叫び乍ら。

初夏の星座に“あいつとの出逢い”を感謝し乍ら....。




また僕はこんな声も聴いたんだ。

『・・・はもう独りじゃないんだよ!』

微かにあいつの声が夜空から聴こえた....。




『そう、僕はもうひとりじゃないんだ!』


そう想った瞬間、

“夜空の乙女”が、

少し僕に微笑んでくれた....。



思春期を迎える僕が、“宿命”を克服した瞬間だった。


To be continued.....








 
 




 





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最終更新日  2005.08.30 19:50:37



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