カテゴリ:ヘルパー日記
ターミナルケアになったおじいちゃん。
オムツ交換をしようとすると、起き上がる元気もないのに、怒鳴りながら手を振り回して私のか細い腕をたたきまくる。 それを「分かった、分かった、すぐ終わるからね~~~」 と笑顔でかわす。 まるで手負いの熊状態だが、それも体がしんどいからさせる事で仕方がない。 そのおじいちゃんも亡くなった。 シベリア抑留の話をよくしていた。 「あの寒さを思ったら、こんなん寒さに入らん!」 が、口癖だった。 油断をすると手が身体に伸びてくる。 今日はなんだかまずいぞ・・・ って日は適度な距離感を持って、さわらせないようにしていたが、他のヘルパーは被害を被ったこともあったようだ。 まっ、でも憎めないおじいちゃんだった。 頑固でワガママで自己中なおじいちゃんは、家族からは早く○ねば良いのにと言われていたが、家族でもない私にとっては、気の良いおじいちゃんであった。 最後は入院をしたが、亡くなったことは事務所にも知らされなかったらしい。 お葬式もご近所さんにも知らせずに、ひっそりと執り行ったようだ。 このおじいちゃんがよく言っていたのが 「○○がな、入れ歯を作ったらな、すぐに死んだんや。 歯を作ったら死ぬんやぞ」 友だちが入れ歯を作ってすぐに亡くなったことを言っているのだ。 だから入れ歯が合わなくなって、フガフガしだし、奥さんが入れ歯を作るように勧めてもガンと受け入れなかった。 こんな事を言うと不謹慎だけど、いつも 「わしはもう死にたい。はよお迎えがこんかな・・・」 と常日頃から言っているおじいちゃんが、入れ歯を作ると死んじゃうから作らないってことがね、なんだかおかしかった。 「ホラ、やっぱり死にたくなんてないんじゃない! (笑)」 って言うと怒るから口が裂けてもいえないが、心の中ではそう思ってなんだかおかしかった。。。 そのおじいちゃんがね、急に入れ歯を作るって言いだしたのよね。 で、結局新しい入れ歯を口に入れることなくあの世に行っちゃったのよね。 たまたまなんだと思う。 ほんとたまたま。。。 でもね でも おじいちゃん一人で外に出るのが好きだったのが、それも出来なくなり、日中は部屋に一人ぼっちで、な~~んにも楽しい事がなくなったのよね。 自業自得・・・ でも寂しかっただろうね。 奥さんは文句を言いながらもよく面倒を見ていた。 「あの人が死んだら好きなところへ行ける」 って言っていたけど、今好きな所へ行けているのだろうか。 同居の子どもさんやお孫さんともとくに仲が良いとは思えなかったけど、介護する人がいなくなって幸せになったのだろうか。 訪問していた時は、自分がもらったお薬のことや、身体の不調の相談を受けていた。 子ども孫とはそんな話はしていないようだった。 今、自由を満喫していたら良いのにね。。。。 何十年もワガママじいちゃんに連れ添ってきて、旅行も行けていないと嘆く人生、取り戻せているのだろうか。。。 たまに仕事帰りに家の側を通るのだが、奥さんらしき洗濯物が干してあるのを見たら、なんだかホッとする。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.06.21 21:22:06
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