♪ 天然の恵みに触れる煩作業 和蝋作りの楽しからずや
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穏やかな暖かい日が続いた先日、N氏はさっそく櫨の実を取りに行ってきた様だ。隣家で借りた高枝ばさみを持って、見つけてあった場所へ直行。
高くて半分しか採れないかったり、手の届く丁度いい木だったりといろいろだったが、まあそこそこの量が手に入ってご満悦の様子。
ちょうど孫の来る日だった。初めて見るものは珍しさから触りたくなるのが人(幼児)情だ。孫をたぶらかし遊びを装って、房から実を切り離す作業を手伝わせた。絶対量が少ないので圧搾するに余分なものは付いていない方が都合が良いだろうと、N氏の判断があってのこと。
最初は面白がってやっていたがそこは幼児のこと、案の定、間もなく飽きて来た。ほぐした実をいじって遊び始め、何かの豆に見立てて容器に手を突っ込んではかき回したりしている。
「焙煎してるんだぁ」と、N氏も合わせて調子に乗せて、珈琲屋さんに仕向けた。
それに乗じて、お婆が秤を持って来た。注文した豆をきちっと計るついでに、秤というものを見せてやりたかったのだろう。
「これがハカリよー」って。これが女よーと言って、息子に裸を見せた女優がいたように・・・
「100グラムください。」
珈琲屋さんが甲斐甲斐しく袋に入れて、秤に乗せて計る。
「いちまるまるって書いてあるでしょう、ここまでだよ。」とお婆が秤の見方を教えている。
「いくらですか?」
「三百百五十円です。」
まだ百の位がちゃんと言えない孫。言う度に数字がおかしくて笑わせる。
「今度は300グラムください。」
300gを二回計って、少し残った。
それで、この容器に入っている実は700-800gほどあることが分かった。この日はここまでで作業終了。
採取した櫨の実全体を撮った上の写真。容器、一袋、一塊はそれぞれ採取した場所が違う。それぞれが容器のほぐした実と同じぐらいの量にあたるので、全部で正味2.1-2.4kgぐらいはある計算になる。これから一体どれだけの蝋が取れるのだろうか。2割は無理だろう。最終的には1割ぐらいなもんじゃないかな。20-30g? なんにも出来ないか。
こんな何の得にもなりそうにない事を、躊躇せず疑問にも思わずせっせと熟していくN氏は、アホか? 酔狂の極みか。
左のもの(山積みのもの)は、枝に葉も付いていてまだ水分を含んでいるらしく、ぷっくりとして実が大きい。
右のもの(袋に入っている)は、去年のものなのかうす黒くて実が痩せている。黒いのは蝋の成分が表皮ににじみ出ているためとみられる。
「孫がいないと捗るなぁ」と、N氏。さっきまで本を読んでいたが、眠くなって来たので、眠気覚ましに前日の続きを始めた様だ。
日向ぼっこしながらやっているうち、毟るコツを覚えて楽しくなった。この、まだ生の感じの残る実は白っぽくて粒立って、「如何にもって感じだなぁ」と、その美しさを見て悦に入っている。
黒いしょぼくれた方もやってみたが、どうにも毟り難いらしい。表に滲みでている脂分のせいらしく、こっちは実をほぐさずそのまま蒸器にぶち込んでやると言っている。
さあ、これから先が問題だ。
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