♪ ウィンナーがちくわぶとなる陳珍のウルシオールにかぶれて痒し
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N氏が何かつぶやいている。
「いんもうかいかい せっしてもらさず。」
「はぁ? なんだそれ。」天網恢恢疎にして漏らさず、なら分かるけど。
「臍下搔痒」
「へッ、隔靴搔痒の間違いでしょう。」
「だってよー、痒いんだよォ。陳珍が。」
そういえば奴は前の日、櫨の実をいじってたなあ。まだ青い葉っぱの付いてるやつの実をほぐしたりしてったっけ。その手で無意識にトイレへ行ってオシッコをしたんだろう。
昼間は何ともなかったのに、夜一眠りしてから「なんか痒い」って気が付いたらしい。まあ大した痒みでもないし、どうってことないと思ってそのまま寝てしまった。それで朝になって、パソコンに向かっていると首の辺りも痒くなって来た。
間違いない。櫨でかぶれたのだ。ウルシの仲間なのでかぶれることがあるということは知っていた。実をいじるぐらいではどうも無いはずだし、現に孫にも手伝わせて実をほぐしたりしていたのにどうも無かった。それで油断したらしい。
翌日に採って来たものが生木だったことを忘れて、前日と同じようにいじったものだから、さあ大変。ウルシ様がお出ましになったのだ。「悪い子はイネガー」とばかりに本性を表して、伝家の秘法をお使いになったのだ。
陳珍の表皮が腫れて “ウィンナー” が茹でた “ちくわぶみ” たいになっている(ちょっとオーバー)し、左首から顎にかけてブツブツが赤くなって、ぶつぶつ言っている。二日目の今朝は、余計痒みが増したようだ。ウルシオールという油脂成分がその犯人らしい。
生木はさすがに要注意だった。漆の作家を目指す若い女性が、漆を塗る工程でかぶれ、顔がぼんぼんに腫れて大変な目に遭ったという話を聞いたことがある。人によって症状は随分差があるらしく、まったくかぶれない人もいるらしい。その若い女性も徐々に慣れてかぶれなくなったようで、その後は漆芸作家になって活躍しているはずだ、たぶん。
【米国皮膚科学会が2014年4月に発表した症状と、8つの対処方法】
「症状の特徴」
*ウルシへの接触から8~48時間後に症状が現れる
*激しいかゆみ、赤い発疹、大きさのまばらな水疱ができる
*植物が皮膚に触れたところをなぞるように水疱ができる
*ウルシオールはすぐに肌に吸収され、水疱の液体がついてもかぶれは感染しない
*症状の改善は早くて2~4週間、遅いと1年近くも治らないことがある
ウルシオールという油脂成分は、ゴム手袋をしていても浸透してくるほど強力らしい。
「8つの対処方法」
N氏の場合は⑦なので「ヒドロコルチゾン」とやらを塗るのがいいらしいので、教えてやろう。薬局に行けば手に入るだろう。
「症状の改善は早くて2~4週間、遅いと1年近くも治らないことがある」って、かなり厄介な話だが、薬をつければもっと早く治るということだろう?
あと3本、一か所に自生している櫨の木を見つけてあると言っていた。まだ葉が付いているので当分採るのは止めておいた方が良さそうだ。
12月に入って、例年ならとうに落葉する時期を過ぎているはずなのに、暖かい今年はどうもかなり遅れているようだ。
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櫨には古来から日本にある山櫨(ヤマハゼ)というのがあって、櫨蝋の産業の発展のためにヤマハゼよりも蝋の成分が多い「櫨」を中国から輸入したらしい。よく似ていて葉の形で判断ができるらしいが、それ以外での判断は難しそうだ。
白っぽい実が櫨で黄色っぽいのが山櫨と書いてあったりするが、良く分からない。二つ並べて比較すれば一目瞭然なのだろうが・・。
櫨の方の葉が細く、葉先が細くとがっている。山櫨の葉は波打っていつのが特徴。
ヤマハゼの実は蝋の収量が減るだけで、混ざっていても問題ないなら、それはそれでいい。
因みに、街路樹に植えられて今まさに真っ赤に紅葉している「ナンキンハゼ」の実からも、少ないが蝋を採ることが出来るらしい。見るからに真っ白な実は、確かに蝋分がありそうな感じがする。
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