♪ ゆうべ見し夢が重なりゆくように文字に昇りく鏡花の世界
読むべきものを前にして、そのいずれもが面白そうでウキウキ、わくわくしている。今日も明日も冬型の気圧配置で北西の風が強く、寒い一日。
こんな日は、炬燵にぬくぬくしながら本など読んで過ごすのが、老人の心と身体にとってはモアベターであり、正しい時間の食べ方なのです。
「文藝春秋3月号」は、芥川賞受賞の2作品が全文掲載されている。これは昨日買って来たばかりで、他の記事をパラパラとめくって読んでみたりしているところ。
「梶山秀之」についての随筆があって、彼の本は読んだことがなくポルノ作家ぐらいにしか認識していなかったことが恥ずかしくなった。
あの文春砲を当初から打ち続けていた「梶山軍団」のリーダーとして活躍。それだけでなく、自動車業界「黒の試走車」を書き、産業スパイ小説という新分野を開拓。小説誌、週刊誌、新聞を舞台にジャンルも多彩。流行作家にのし上がったて、月に1千枚、最高で月産1千3百枚を記録したというから恐れ入る人。
昭和44年の文壇の所得番付で、松本清張をおさえて一位になっている。そして、「先輩作家の書いた恋愛小説を読破し、そこに欠如しているものが、セックスにおけるノウ・ハウと看破。《同じ書くなら、現代で考えられうる、あらゆる変態性欲の生態を火薬のように詰め込んでやる。世の偽善面したやつらの前で、大爆発を起こしてやれ》と、その分野に切り込んでいったという。
取材先の香港のホテルで突如吐血し、死去したのが享年45歳だった。生前、総計で11万2千6百12枚を書き、死後も120冊以上が文庫化され、累計130万部を超えたという。
こういう話がつづられている巻頭随筆は、いつも最初に読む。今「舞い上がれ」にも出ている「松尾諭」も寄稿していて、自身が忙しい中で小説を2冊出した経緯などが書かれている。
「GLOBE」には、死んだ人の亡骸を文字通り “土にして大地に返す” という、画期的で理想的な手法が紹介されている。埋葬のあるべき姿に、我が意を得たりとばかりに手を打った。いずれ詳しく書きたいと思う。
好きな泉鏡花の今回は、現代語に訳されたもの。その絢爛で幽玄な、鏡花独特の文章は現代語に訳されたからと言って色あせるものではない。古い書物にはかながふってあるのが目障りで、それが無い方がスラスラ読めると思うがしかたがない。
状況描写にうっとりしながら、懐古趣味でもないのにその言葉の操りにつられて面白く読んでいる。もう終盤に差し掛かっていて、貸出期間を延長してもらいもう一度あたまから読み返そうと思っている。
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