♪ 風花のながれる昼の公園にオキシトシンがたゆたっている
最高のコンディションとなったお花見。ブルーシートを敷き、その中央に布を敷いてあまり好きじゃないブルーの色を減らす工夫をした。
この日、完成して15日に引っ越しの準備に来ていた、もう一軒の夫婦にも声をかけた。いいタイミングで顔つなぎが出来た。
奥に正座して畏まっているのが新しい住人の若夫婦。
乾杯の後、しばらく歓談。頃合いを見計らって自己紹介してもらった。出身地が同じだったり、皆さん年齢が近いので話が早い。私は皆さんの両親よりも年長なのっでそうそう話が合うものでもないが、ときどき姿を見ると声掛けたりしていたので、気心は知れている。
しかし、私のその実体は人見知りの社交好きで、常識嫌いという変な爺さんだ。あまり深入りはしない方がいい。酒さえ飲めればそれでいいのだ。花より団子より酒という、この宴の異物みたいなものだから静かにしていた方がいいと。
何をしゃべったのかあまり覚えていない。みんなが楽しそうにしていたのを眺めて、ときどき写真を撮っていただけのような気がする。
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小さな子供がいると場が和む。子どもは自家発電の常夜灯みたいなもの。いつも灯りをともしてくれる。
孫のひろ君は、少年野球の練習があり、終わってからの参加となった。
| 息子の家の柴犬・小次郎は、こんなに人好きとは思わなかった。分け隔てなくみんなの所で愛嬌を振りまいている。
すり寄って行っては顔を舐める。犬は苦手なんて言っている人など、お構いなしにぺろぺろと。
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最後は子どもたちとボール遊びで腹ごなし。ちょっとした広場があって、周りより少し下がっていて、背景には緑地帯がある。
一番向こうは、ゲートボールのグランドだったところ。リーダー的な人が亡くなって、今はも誰もやらなくなって。昔はお花見をする人もあったらしいが、近頃はそれもなくなっている。
この場所は広さもちょうどいいし、通りからは離れていて静かだし。最高じゃないかな。
高齢者が亡くなり、入れ替わって新しい住人が入って来る。理想的な循環が出来つつある。限定的なエリアだが、こんな風になることなど想像もしていなかった。私はせいぜいあと10年くらいのものだが、ここでの生活が愉しみだ。 |
はらはら はらはらと、風が吹くたびにシートの上に散る花びら。ただの満開の時期よりもずっと趣がある。桜は咲き始めと、この散っている時が一番好きだ。
これから先、彼らや私にどんなことが起こるか分からない。「花に嵐」はある意味セットみたいなもの。こんな素晴らしい日があったことがウソのように思う日がやってこないとも限らない。
別れの盃を交わすこともあるだろう。桜はそんなことまでを思わせる。
「勧 酒(于武陵)」
勧君金屈巵 満酌不須辞
花発多風雨 人生足別離
井伏鱒二訳
コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
君にこの金色の大きな杯を勧める
なみなみと注いだこの酒 遠慮はしないでくれ
花が咲くと 雨が降ったり風が吹いたりするものだ
人生に 別離はつきものだよ 荻窪文士より
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