♪ サーッと降り濡れて嬉しきこともあるあの一言の忘れがたきよ
短歌を詠むに当って、次への飛躍の一歩がなかなか踏み出せないでいた。新聞短歌への投稿はしばらくご無沙汰していましたが、ある人から刺激を受けてその気になっています。
それで一時期やっていた新聞への投稿を再開し始めました。区切りの意味を込めて、今までに採っていただいた短歌を記しておこうと思います。
「東海歌壇」朝日新聞 加藤治郎選 (2020年~2022年)
幼子が時どき言ってた「ばんばんち」半年たって「ばあちゃんち」と知る
「少年と犬」を読んでいる足元の猫は知らない泣いていること
奇っ怪な夢にうなされ目覚めれば胸に五キロの猫が寝ており
いつからか吹かなくなりし口笛がマスクの下に蘇りくる
右奥が部分入れ歯となりしより好きな女優の名を忘れゆく
猪の頭部のごとき筍が「不作」のメモ添え玄関にあり
おしゃべりでごめんなさいと言う人の顔暮れてゆく散歩の途中
ありがとうの手話を覚えてより楽し横断歩道をゆっくり歩く
とんと乗りとんとんとんと胸の脇じわりと石になってゆく猫 |
ブログに載せたものはいい歌であっても応募できないし、応募するつもりで歌を詠んでこなかったので、平凡なものが多いようです。NHK全国短歌大会も応募してはいましたが、何となく他人事のような心持ちでいたようです。
「NHK全国短歌大会」入選
群舞する赤き和蘭獅子頭アクアリウムにちとも休まず
棟梁が話し始めるガキの頃脚色あるを割り引いて聞く
日の当たるあの杉の木の天辺がぼくのこころのシェルターだった
団塊のわれら犇めきつつ生きぬ良い時代だったには違いなかった
顔ぶれが変わりてエサを替えてみるラードに残るくちばしの跡
庭の花を摘んで入れたる段ボール秤にそっと乗せて別れき |
勉強が足りない。もう少し頑張ってみようと思います。公募で入選、入賞する人たちは皆さん結社に所属して切磋琢磨している人ばかり。そんな人々と競争すること自体無理なののかもしれない。
でも歌で身を立てようと思っているわけでもないし、楽しみとして詠って来たしこれからもそうしていくつもり。
NHK短歌8月号の「短歌のペイン・クリニック」コーナーで、こんな悩み相談が載っていました。
回答者の黒瀬珂瀾氏は、25年の歳月を短歌と共に生きてきて、500首以上の歌を詠んできたあなたはもう立派な歌人です。歌を忘れず、己の感情を言葉にすることを意識しつつ花鳥風月の美を喜び、この世の光や闇に思いを致し、他者のこころを慮ってきたこと。それは歌人の心そのものですと。
採用されるされないとか、駄作だとかは二の次の事として、これからも続けてほしいと。簡素なもので良いので、歌集を纏めてみることをすすめている。そこから見えてくるものがあるからと。
過去の一部の短歌を書き出してみる気になったのは、この文を読んだことも影響しているかもしれません。面白いから続けられるし、難しいからやりがいもある。
上達するためには幾つかの必須項目があるのでしょう。しかし師を持たず独立独歩が信条の私としては、自分で道を切り開いていくしかない。
時間はかかっても構わない。その方が長く続けられる。
才能が有るのに見切ってしまう人、挫折して離れてしまう人、周りの状況にかき回される人、注目されて自分を失ってしまう人、そんな人に私はなりたくはない。
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