♪ ユーラシアに死者を見ながら飯を食う見えて見えないパラレルワールド
こんな本を借りてきた。
図書館の毎月やっている企画展示コーナーで、作者の名前「レオ・レオーニ」に魅かれて・・。読んだことはないが、名前だけは絵本作家として知っていた。その絵本作家が変わった表題の本を出しているのに目が止まった。大した意味もなく、好奇心ってやつで・・。
「平行植物」って何だ?
表紙の絵からすると平行に立っている木のようなイメージだが・・。
それが、そうではなくて「パラレルワールド」と同じコンセプトによるもので、現実には実在しない、概念上の植物のことらしい。「自然が芸術を模倣するのか、芸術が自然を模倣するのか・・? 幻想の庭・想像の山野に繁茂する 数奇な植物たちの博物誌。」
どの分野に属するか判別しにくい本であり、作者自身が黒子(くろこ)となって “植物である前にことばであった” 植物群のフィクション。幻想の植物ではなく、むしろ幻想そのもの──に対して存在しない植物群を通じて説得力のある、詩的な意味で測ることが出来る賢個さというものを与えようとした幻想そのもの・・・
学術書の体裁をとって事細かに記されている、その飽くなき執着心には驚かされる。ところどころにある注釈が本の内容に信憑性を与える役割をして・・。作者が永年温めてきた概念とそれを基にして描いた絵も載せてある。
数世紀にわたって徐々にではあるが、しかし、確実に勝利をおさめてきた植物研究の大いなるプログラムは、最初の<平行植物>発見のニュースによって激しくゆさぶられる運命にあった。この未知の植物の発見は、恣意的かつ予測不可能なものとして、最新の植物学の成果のみならず伝統的な論理構造さえも脅かすかのようにみえたし、現在に至っても事情は変わらない。
フランコ・ルッソウリは次のように記述している。
「これらの有機体は、物理的な実在としてあるときはグニャグニャしており、あるときは多孔性、またあるときは骨質でありながらもろいというように、実にさまざまな性質をもち、まるで何らかの重大なる変身を盲目的に期待するかのように成長する。とがった角状の突起があったり、ペチコートやスカートの縁飾りのごときひげ根や雌しべをひらひらさせたり、粘液質あるいは軟骨質の関節部をもっていたりするこれらの奇妙な植物は、結局のところ正体があいまいで、強いていえば未開の神秘的なジャングル植物の一種かもしれない。だが、それらは現実の自然界ではいかなる種にも属さず、もっともプロフェッショナルな接ぎ木法でさえもそれらを生ぜしめることはできないだろう*1」*1 フランコ・ルッソーリ著「数奇植物」(イル・ミリオーネ社、ミラノ、1972年)・・・・・・・
こんな感じで、そのものについての様々な実態と論理的な裏付けが述べられていく。
今朝はここまでにしておく。あまりにも意表を突く話で、これらのものを根拠立てて [空想の中に実在する] ことを証明すべく知識と想像力を総動員して書き上げた本。かいつまんで紹介するなんて出来ない。
興味のある方はぜひ手に取って読んでみてください。
「板橋区立美術館」で、2020年10月24日(土曜日)~2021年1月11日「だれも知らないレオ・レオーニ展」が開かれたようだ。
「レオ・レオーニ」1910年、オランダのアムステルダム生まれ。家はユダヤ人の裕福な家庭で、コレクターの叔父の影響で、パブロ・ピカソやパウル・クレーなどの芸術に囲まれて育った。
イタリアのファシスト政権誕生と人種差別法公布により、アメリカ合衆国に亡命し、フィラデルフィアの広告代理店NWエイヤーに就職する。ニューヨークで複数の新聞社で美術担当編集者、グラフィックデザイナーとして働きながら、美術学校や大学で講義を行い、各都市での巡回展も開いた。
1945年にアメリカ国籍を取得し、1953年にはアスペン国際デザイン会議の初代会長を勤める。エリック・カールの才能を見出し、ニューヨーク・タイムズ広報部への就職を世話した上、編集者を送り絵本の仕事も勧めた。
1959年、孫のために作った絵本『あおくんときいろちゃん』で絵本作家としてデビューを果たす。wikipediaより
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架空といと言えば、村上春樹の処女作「風の歌を聴け」に出てくるデレク・ハートフィールドも架空の人物だ。
彼は、ごていねいにも「あとがきにかえて」として、デレク・ハートフィールドとの出会いのことなどを詳しく書いている。よく読むとどうもウソっぽい感じがしてくるが、この部分も含めて小説になっているというわけだ。
また、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」はパラレルワールドだし、彼の小説にはパラレルワールド的な要素も多い。
奇しくも、最近読んだレオ・レオーニと村上春樹には多分に共通点があるようにみえる。最近、偶然にしてもそういうものがつながって目の前に現れてくるのが何だか不思議でならない。
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