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歌 と こころ と 心 の さんぽ

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2024.10.16
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カテゴリ:ことば

♪ 彗星の氷の帯を引きながら地球に秋のみじんをこぼす





 翻訳家のセンスはさすがにするどいですね。
 「ぬ」という語に感じる一種特別なイメージ。不気味な妖気や邪気が漂う言い、韻音の持っている不思議な魔力を楽しんでいる。



 鵺(ぬえ)、ぬばたま。ぬめりや泥濘(ぬかるみ)、濡れ衣に抜き打ち。確かに油断がならない感じがする。

 濡れ手に粟、ぬか喜びに糠に釘。ぬれ場、抜け穴、濡れネズミ。抜け毛、抜け駆け、抜け目なし。抜け落ち、ヌガー、沼、ヌード、盗人、糠蚊、ぬか喜び。
 ぬうっと、抜かす、脱げ、盗む。ぬたうつ、額づく、脱ぎ捨てる。抜き差し、ぬくぬく、脱ぎ散らす。ぬけぬけ、ぬらぬら、塗りたくる。ぬっとり、ぬるぬる、ヌーベルバーグ。白膠木(ぬるで)、ヌンチャク、ぬれ落ち葉、ぬめぬめ、糠みそ、濡れ雑巾。


 何か重い、暗い、ちょっと斜向きの、マイナスのイメージを持ったことばが多い。言葉を知ら知らなくても、聞いたり言ったりすると自然にそんなイメージが湧いてくる。
 
 黒川伊保子氏は、言葉(50音)の持っているイメージを利用して、ネーミングや子どもの名づけをするサービスをしている。
 語感(ことばのイメージ)をAIに理解させるための枠組みを追究する過程で、語感の特性を見つけて数値化している。人工知能(AI)の研究開発に従事し、人工知能エンジニアとして自然言語解析を研究してきた人ならではだ。

 「あ」ならどういうイメージがあって、どういう風に感じるかを数値化しているわけだ。例えば「暖かい」が○点、「親しみやすい」が○点のように、透明感があるとか、軽い・重い、明るい・暗い、などいくつかの項目を設定して点数を付けるのでしょう(たぶん)。

 このデータを自由に観られるように一般開放してくれればいいのに、企業秘密とばかりに抱え込んでしまっているのが残念だ。

 黒川伊保子氏の「商品名と言語音に関する研究」
 例えば k の音の場合、喉を硬く締め、強く息を出して喉をブレイクする。喉をブレイクスルーした息は、最速で口腔内を抜ける。最速で抜ける息は唾液と混じらないので、ことばの音の中で最も乾いている。したがって、k 音を発音する度に、発話者は硬さ、強さ、スピード感などの音象徴を体験しているという。

 このように、子音、母音について発音の生理構造から音象徴を導いている。そして、それを基にブランド名や商品名の分析を行っている。

 例えば新幹線の「ひかり(hi-ka-ri)」について次のような分析をしている。
 先頭拍 hi の「早さ」の音象徴と、第二子音 k の「速さ」の音象徴が響き合い、「未来に向かって走る」スピード感が創生されている。さらに、第二拍 ka は輝きの音象徴も表し、ここでは k は 2 つの役割を担っていることになる。最後の子音 r は透明感を提供し、語尾母音の i も突き刺すようなスピード感を提供する。よって「ひかり」は、光のイメージそのものの印象を与えるとしている。


 因に、怪獣の名前には濁音(ゴジラ、ガメラ、キングギドラ、ラドン、アンギラスなど)、菓子類の商品名にはパ行音(ポッキー、プリッツ、パナップ、プッチンプリン、パピコなど)が多く使われている。

*おまけ
 「趣向や体質の変換は7年周期」夫婦関係についても同じ、なんてことも言っている。
 
 以前、ここに書いた翻訳家・東江一紀(あがりえかずき)氏も、とびっきりの言語感覚を持った人だった。

「ねみみにみにず」を書いた 越前敏弥氏は彼のことを、「文芸翻訳というのは、ようするにアナーキーな、フレキシブルな、非体系的な、臨床的な芸能だ。だから翻訳学校などでいくら熱心に勉強しても、それが承りの姿勢の学習である限りプロへの壁を乗り越えられない。教わった通りにきちんと訳すだけでは、商品としての訳文にはならない。至る所で臨機応変の処置、緊急避難、綱渡り的解決といったその場限りの力業が要求される。そういう局面でこそ、例えば、人生経験が生きて来る。読書の蓄えが生きて来る。性格のねじれが生きて来る。」と図抜けた翻訳家の本質を述べている。

 文芸翻訳はかなり特殊な仕事で特殊な能力や資質が求められると、翻訳者を目指すものへのご宣託も・・。

 ●外国語で書かれた文芸作品を精読・鑑賞しながらも、決してアカデミックな深みにはまらない原文読解力。
 ●達意の文”芸“の名に値する文を綴りながらも、けっして自分の主張を盛り込まない日本語表現力。
 ●性格のゆがみ、ねじれ、ひねくれ、いじけ、狷介さ、偏屈さ。へそ及びつむじの適度な曲折。
 ●一日に何時間もずっと机の前に座って、頭脳系肉体労働に携わっていられる忍耐力。もしくは苦行を苦行として認識できない鈍感さ。
 ●継続的な貧乏生活への適応力。もしくは、被虐嗜好(マゾッ気)。もしくは、低収入をものともしない財力。

 
 私も日本語という言葉が好きで、毎日こうしてブログを書き、短歌を詠んだりしているわけです。

「言語明瞭 意味不明瞭」なんて言われた総理大臣がいましたが、日本語ほど多様な表現方法がある言語も珍しいのではないでしょうか。
 オノマトペの豊富さと言ったら、そりゃぁもう日本の漫画に勝てるものは無いでしょう。副詞の豊富さ多様さも群を抜いているでしょうし、和製英語や短縮してやりとりする柔軟性とか、言語感覚が優れているとしか言いようがない。

 そんなベースがあるのに言葉の中身がどんどん薄くなっている。政治家のことばのなんと薄くて軽いことか。





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最終更新日  2024.10.16 10:42:41
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◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題しました。
◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
◆2016年5月8日より「気まぐれ短歌」と改題しました。
◆2017年10月10日より つれずれにつづる「みそひともじ」と心のさんぽに改題しました。
◆2019年6月6日より 「歌とこころと心のさんぽ」に改題しました。
「ジグソーパズル」 自作短歌百選(2006年5月~2009年2月)

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