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カテゴリ:八房之記憶
食べ散らかしたトマトソースライスの皿に指を突っ込んで、舌打をしながら指を舐めて、部屋に戻ってみるとHASIRAの携帯電話がチカチカ光っている。
周囲を確かめて、それを手にとって、もう一度確かめて、スウイッチを入れてみる。-果たして…見覚えのある女性の写真。誰だ?電話帳には記載されていない。誰だ。 僕は、記憶の頁を一枚めくる。 「黒川…」その名前に、携帯の中の彼女が微笑む。 黒髪の、大きな眼、薄い唇。そのどれもが悪意を持っているかのように美しい。 それにしても、彼女は何のために自分の写真を送りつけてくるのか。 判らない。その微笑の真意も。 彼に聞けば、その返事は容易にくるだろう。 しかしそれはあまりにも怖くて聞けない。 頭痛がすると言っては飲むボルタレンは、通常量の三倍にものぼり、うつろな目でソファーに横たわる彼だから。 日記に(完)と書き込んで、二ヶ月もの日常を終わらせる彼だから。 真夜中にかかってくる千夏からの電話を、さも面倒そうな表情でかわす彼だから。 僕は怖くて何も聞けない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/10/10 10:22:22 PM
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