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カテゴリ:八房之記憶
第三話
部屋の中で彼女の返事を待つ。 一時間、そしてまた一時間と過ぎていく。 判っている。彼女は今仕事をしているのだから。 僕は飼い主を待つ犬のように、黙ってじっと待つ。でも少しだけ待てなくなって、ひょいと門の外を見たりする。けれどもそこに彼女の姿があるはずもなく、通りすがりの女子大生に笑われる。数ヶ月前、僕は沢山のものをいっぺんに失った。それでもこうして生きていること自体不思議なモノであると感じずにはいられない。 確かに僕の感情は、もう僕以外司れなくなってしまった。 それはとても寂しいことだ。 僕もう笑うことも、悲しみにくれることも、すべて定められたパターンの上だけでこなさなければならなくなった。 それを人と呼ぶのだろうか?判らない。 僕は、黙って、彼女の返事を待つ。 夜が更けていく。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/11/11 12:27:41 AM
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