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2006.02.24
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カテゴリ:文芸
「たしなみ」 岡本かの子著「人生読本」より抜粋
たしなみということは、効果如何(いかん)を考えず、責任として尽くすところに価値があります。誰への責任でしょうか。誰への責任でもありません。自分の職分として責任であります。人に知られず、効果を考えず、深く自分の職分を考えて、その準備を深めていく。そのことを楽しみに持って行く。これが本当のたしなみであります。故にたしなみという言葉には奥床しさという感じが伴います。

人に知られず、効果に現れずとも、たしなみの深い人には、奥床しさがほのぼのと立騰(たちあが)るものであります。気配というものは正直なものであります。

ある一事についての深いたしなみは、もうそのことの上のたしなみだけでなく、人間上のものになって来ます。その心得はもう一芸のものでなく、諸道に通じます。そして人を感動させます。利休の茶道の歌に、

寒熱の 地獄を潜る 茶柄杓(ひしゃく)も

    心なければ 苦しくもなし

憂き辛い世の中も、無心で向かえば何ともないという妙諦に茶の経験から入ったのであります。ここで無心ということは、ぼんやりとか冷淡になってとかいう意味ではありません。まっしぐらに傍目(わきめ)も振らずという意味であります。無心とは「迷いの心なく、ひたすらに」という意味です。

出典:岡本かの子著『佛教讀本』昭和九年大東出版社刊 のち『人生読本』として改題再刊
岡本かの子。1889(明治22)年、東京生まれ。本名大貫カノ。「明星」「スバル」で歌人として活躍。1910(明治43)年、漫画家岡本一平と結婚。翌年、太郎を産む。
大雪が降ったある日、豊臣秀吉は「いかに名人、利休でも、こんなときは油断してまごつくだろう。一つメンタルテストに出かけてやろう」。ところが利休は

「ようこそ、おいで下さいました。何はなくとも雪中の粗茶一服。さあ、どうぞ、これからおいでなされませ」

利休はかかることもあろかと平常から用意をしていた。いきなり訪問して驚かしてやろうとした秀吉は 茶人としての利休の日頃のたしなみに 自分の行いを恥ずかしく思う。


先日、インフルヘンザにかかっていた時、寝ながら読んだ本の抜粋です。事務所を開業したての頃は一流になろうと、仕事が終ってから 毎晩夜遅くまで勉強していた。最近は勉強もしなくなったし、本も読まなくなり、「たしなみ」に欠けるようになった。生きている間は勉強。反省しました。

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最終更新日  2006.02.24 22:06:48
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