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吾が輩は野良猫である

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2008.01.28
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カテゴリ:健康
1989年4月。結婚式を終えたわたしの行き先は新婚旅行ではなく、病院のベッドであった。余命一年の宣告を受けてから半年が過ぎていた。
三井記念病院は当時心臓手術では国内で最も忙しい病院であった。一人の天才心臓外科医を頼って、日本中から患者が集まっていた。
世界で5本の指に入る「神の手」を持つ心臓外科医。TVドラマ医龍のモデルにもなっている人物である。最前線で戦う病院とはこのように常にベッドは満員、予約が半年先までぎっしり埋まっているまさに戦場であった。
9時間近くにも及んだ大手術から生還し、最新医療や家族、そして善意ある人たちに支えられて20年の歳月を生かしてもらった。
昨年6月の循環器外科で主治医から告げられた言葉がわたしの心に重くのしかかる結果になるとは全く予想もしていなかった。
20年前、執刀医は言った。「神戸さん、3回目はありませんからね、安心してください。」
その言葉をこの20年信じて生きてきた。しかし、病魔は足音も立てず、わたしの心臓を再び蝕んでいったのである。
「神戸さん、手術しないとまずいです。」「え?...」わたしは冗談だと思った。有り得ない、そんなことは絶対有り得ない...。
頭の中が混乱し収拾がつかないまま、診察室を後にした。3回目の手術?しかも、前回手術した部位ではなく、三尖弁閉鎖不全。僧坊弁閉鎖不全は子どもの頃に罹患し、打つ手なし。と言われていた。
長い闘病生活の末、19歳で1回目の弁形成術を受けた。
そして13年後に人工弁置換術を行った。そしてみたび傷口をさらけ出し、内臓を外気に触れさせ、傷だらけの心臓に三度目のメスが入る。
命の保証はない。詩集「天国の地図」冒頭の詩「手術台に上がれば」その恐怖がまたもわたしを襲うのである。しかしもう逃げる訳にはいかない。今のままでは10年持たない。
人はよくわたしのことを強運の持ち主と呼ぶ。自分の人生を振り返るとまさに「強運」としかいいようのない人生を送ってきた。
だから大丈夫、最初の手術の時、亡き父が現れわたしの心臓に生命の息吹を吹き込んで行った。あの出来事は今でも忘れない。わたしは大きな愛に守られている自分を感じている。
この命、今終わらせる訳にはいかない。鋼鉄の心臓を手に入れ、やるべきことを果すまでわたしは死なない。1月29日、入院します。





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Last updated  2008.01.28 14:22:59
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