曖昧で面白い日本語
本日買った本だがあまりに面白い。日本語を学ぶ外国人とその疑問に答えたい日本人の為に日英対訳で書かれた、れっきとした真面目な言語とコミュニケーションの本である。自覚する明確な動機もないのに長年英語学習に興味の尽きない坂月だが仕事帰りに書店内を物色中日本人の為の英語学習コーナーではなく英語を話す海外の方向けの日本紹介書籍コーナーで見つけた。笑わせる意図などないと思われる真面目な内容なのに読んでいるとそこはかとなく面白い。まずこのページを読んで吹き出し、心掴まれ、読み終わると書棚に並ぶシリーズ2冊を手に即座にレジに向かう自分がいた。以下抜粋「30分しかありませんから......」は「30分だけある」とどう違うか、「暑くなったんですね」は「暑くなりましたね」とどう違うか、「送ってきました」は「送りました」とどう違うか、「こわしてあります」は「こわれました」とどう違うか、「一度お目にかかりたいと思います」は一度だけ会いたいのか、というような、語法的な疑問に答えるものである。また、「高田さんたち」は「高田さん夫婦」か、「~たち」はどう使われるのか、「お茶でも飲みませんか」の場合はお茶のほかの何か飲むのか、「適当にやってください」の「適当に」はどんな意味か、「千円も出せば......」の「も」は何を表すのか、というような語句について、真剣に日本語を学ぼうとする人の疑問に答えようとした。お茶のほかに何か飲むのか!!確かに(笑)帰宅して夕飯も早々に読み始めたが日本人として自分でも意識していなかった日本語の曖昧さを冷静的確に説明する文章にお腹を抱えて笑うことしばしばだった。その他にもいくつか。「さようなら」についての説明~「さようなら」は、家族の間では用いない。用いるのは二度と会わないと考えた時だけである。夫が家を出るとき妻に「さようなら」と言ったとすれば、それは夫婦の別れを意味する。「あなた」という言葉が英語でのYouほどには日本語で多用されないことについて~「あなた」は同年配の女性の間でも用いられる。(同じ場面で男性は「君」または「お前」を使う。)この場合も、影の薄い「あなた」は人名や地位の名称に押しやられてしまう。2人の主婦が話し合うとしたら、次のようになる率が高い。A : 奥さんも行く?B : ええ。奥さんも?これで実際の意味は、"Are you going, too?" "Yes.You,too?"に当たるのである。「ちょっと」が"依頼"と"断り"の場面で使用されることについて~頼みを断る時にも、「ちょっと」は断りたくない気持ちを表すので都合がよい。何か頼んだ時、相手が、それはちょっと……と言ったら、希望に添えないがそう言いたくないという意味である。否定的な評価を示す場合にも、不本意な気持ちを表したほうが礼儀にかなう。人に企画を見てもらった時、その人が、ちょっと......と言ったら、賛意を保留するという意味である。特定の理由を示す場合には、ここがちょっと......とか、費用の点でちょっと......のように言う。こういう調子だ。改めて書かれると、面白いことこの上ない。しかし実際どうかと聞かれれば、仕事で毎日当たり前のように自分が使っている言語だ!!日英対訳ということもあり、同じ内容が英語でも書かれているため英語学習にも最適。興味を持たれた方はぜひどうぞ。 日本語ノート(v.1)著者:水谷修価格:1,575円(税込、送料込)楽天ブックスで詳細を見る 日本語ノート(v.2)著者:水谷修価格:1,575円(税込、送料込)楽天ブックスで詳細を見る