到着。

平日なのでガラガラの地下駐車場。

その一角に車を止め、エンジンを切った。

昭和３０年代後半に建てられたと言うその建物は

塗装があちこちはげ、配管も錆が浮いている。

雨漏りなんだろうか、天井もぶよぶよな所が有り

老朽化が目立ち、年代を感じさせる。

バンっ

車から降り、ロックをする。

受付は２Fか。。。

案内板を確認し、建物入り口を目で探す。

今日は、その建物の改修設計依頼で初めての打ち合わせだ。

約束時間の１０分前、僕は

建物の入り口に向かおうと歩き始めた。

・・・・・・！

何か視線を感じる。と思って　振り返ると

いつの間に停車したのか　これもまたかなり老朽化した

白の日産セドリックが　数台横に。

その車内、運転席から

年の頃なら５０代後半　伸びきったパンチパーマを当て

白いVネックセーターにグレーのタートルネック。

ファッションまで昭和４０年代だな。と言う様な出で立ちの

初老の男性が　僕を見ている。

「？」

今しがたは無かったはずなのに。。。。

いつの間に　来たんだろう？

そう思いながらも車好きな僕は　そのアンティークな車を観察。

今、走ってきたにしては　不自然に室内が曇っている。

まるで　今まで海底に有り、コケでも生えているようだ。

今朝は冷たい雨だったので

５人程　乗車しているなら呼気で結露も有りえるが

助手席にも後部座席にも誰も乗っていない。

乗っているのは　確かに　その男性一人きりである。

その室内から　男性が

何かを言いたげに　じっと僕を見ている。

あまりにも　じっとこっちを見ているので

ひょっとして　今僕が停めた場所が、

月極契約でもしている

その男性の指定駐車場所なのかな？

と、思い、

その車に数歩近づきながら　声を掛けた。

「すいません、ココ指定場所でしたか？」

・・・・・・・・・・・。

数秒の沈黙が流れた。

そして、

こちらを見つめたまま

その男性の姿が

すーーーーっと　跡形もなく　消えていった。

えっ！

と、目をこすって、もう一度じっくり見たが

確かに　誰もいない。

はぁ？

と、思って、よく確かめようと　その車に近づこうとしたら

その　白のセドリックも　すっと　消え失せた。。。。

あれは一体なんだったのでしょう？