テーマ:近代化遺産を歩く(146)
カテゴリ:近代化遺産・検見川送信所
昔々、検見川送信所の近くに流れる花見川の、とりわけきれいな花島という町に河童が住んでいた。
ある日、河童の親子が花島から海へと下っていくと、天に向かって高く伸びる鉄の棒が見えた。 人間たちはアンテナと呼んでいたけれど、子どもの河童には何のことやら分からなかった。 お父さん河童に聞いた。 「あれは何?」 「送信所というんだよ」 「送信所って、何?」 「世界中の人たちと話ができるんだ」 「世界って?」 「僕たちが住んでいる所よりももっと大きな場所があるんだよ」 「すごいね。そこにはどうやったら、行けるの?」 「川より大きい海というのがあって、その海を越えていくのさ」 「どうやって?」 「僕たち河童と違って、人間は泳ぎがうまくないから、船というものに乗っていくのさ」 「へぇ」 子供の河童の好奇心は尽きなかった。お父さんがいう「世界」にも河童はいるのだろうか? 「でも、送信所があれば、海を越えなくても、世界の人たちと話すことができるんでしょ?」 「そうだ」 「すごいね」 それから、子供の河童は毎晩、お父さん河童にいろんな話をして、とせがんだ。しかし、海を見たいという願いは聞き入れてもらえなかった。 河童と人間は昔、仲良しだったけれど、最近では、人間は河童なんていない、作り話だということになっている。海なんか出掛けて、人間に見つかったら、どんなことになるやら。 お父さん河童はそんなことを思った。 しかし、子ども河童があまりに世界のことに興味を持つものだから、お父さん河童は子ども河童を送信所に連れていくことにした。 お父さん河童も、道には詳しくなかったが、送信所に行くことは簡単だった。だって、遠くからはっきり見えたから。 イモ畑を抜けていくと、真っ白な局舎が見えた。局長室だけに光が灯っている。何やら、忙しくしているらしい。 アンテナは天に向かい建ち、線はさらに四方と結んでいた。 「アンテナって、蜘蛛の巣みたいだ」と子ども河童は言った。 光の灯った部屋を指し、「いま、世界中の人とお話ししているのかな?どんな話をしているのだろう?」子ども河童は会ったこともない世界の河童のことを思った。 2人の河童は15分くらい、いただろうか、この日は曇りだったが、急に雲間から月が顔を出した。満月だった。 それはとても幻想的な風景だったが、月明かりは河童たちには危険すぎた。人間に見つかってしまう。 「さあ、帰ろう」 お父さん河童は子どもの手を引っ張って、川に向かって走った。子ども河童は何度も振り返って、送信所を見た。 それから、何十年後の現代。 その時の子ども河童は、充分に大人の河童になった。花見川も以前より開発が進んで、河童には住みにくくなったが、それでも、花島には美しい風景が残っていた。 ある時、川に一枚の紙が浮いていた。そこには昔見た送信所の写真が載っていた。 懐かしいなぁ。その河童は真夜中、危険を承知で送信所に向かった。アンテナは1本もなくて、目印はなかった。 イモ畑もなく、緑も少ない。人目を気にしながら、迷いながら、河童は苦労しながら、送信所にたどり着いた。確かにアンテナはなかったけれど、あの建物はだけはあった。 昔はあんなにきれいな建物だったのに、とは思ったけれど、建物が残っているのには、なんだかホッとしたのだった。 <おしまい> 千葉県内にお住まいの河童画人の牛玖ひろしさんが、こんな素敵な送信所の絵を書き下ろしてくださいました。この物語は牛玖さんの絵にインスパイアされ、僕が書き下ろしたものです。 牛玖ひろしさんのブログはこちら。こちらには別の物語があります。 牛玖さんがラベルをお書きになったお酒はこちら。 【福を呼ぶ】幸せのかっぱ 「福来る」720ml3本セット 当店通常価格 4,500円 のところ 価格 4,296円 (税込) 送料別 千葉県 鍋店仁勇 幸せのカッパ酒 180ml 6本セット【化粧箱入】要低温 価格 1,400円 (税込) 送料別 日本初の国際放送77周年記念 「ほぼ満月ただの月見@検見川送信所」 日時:10月27日(土)午後3時~ 集合場所:JR総武線・新検見川駅徒歩2分、はなのわ広場 参加費:無料 主催:「検見川送信所を知る会」 pdfファイルを読むにはAdobe Readerが必要です。ダウンロードはこちらから。 PDFファイル版チラシ http://moleskine.air-nifty.com/kemigawamusen.pdf ドキュメントファイル(doc)版チラシ http://moleskine.air-nifty.com/kemigawamusen.doc 「検見川送信所を知る会」では仲間を募っています。入会していただける方はこちらのメールフォームから「入会希望」と明記の上、 お名前(ふりがな): ご住所:〒 電話番号: メールアドレス: をお知らせください。 メールマガジン「検見川送信所J1AA通信」を購読していただける方は以下のURLからお申し込みください。 http://www.mag2.com/m/0000246340.html バックナンバーには創刊準備号があります。 検見川送信所についてはここで過去記事をまとめています。 日本初の国際放送を行うなど日本の通信に大きな貢献をした近代化遺産・検見川送信所が取り壊しの危機にあります。これを保存、再生できないかを考えるプロジェクトです。 賛同してくださる方は以下のソースを貼り付けてください。 <a href="http://moleskine.air-nifty.com/photos/kemigawamusen/" target="_blank"><img src="http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/47/0000060947/20/img2159e7f1zik6zj.jpeg" width="170" height="60" alt="musenhozon.jpg" border="0"></a> 去年の日記は? 2006/10/13 プチ根性エンジェルラベンダー お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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