ぬるま湯体質
王子製紙が北越製紙へのTOB成立を断念し、敗北宣言を表明した。TOBを阻止した北越製紙側は自主独立路線を貫くとはしているが、生き残りは厳しい様子だ。そもそも製紙業界は過剰設備が顕在化しており、過当競争は必死であり、業界再編の波は海外から押し寄せてくる可能性が高いとされている。王子製紙側の提案は、北越製紙の最新型生産設備の投入に併せて自社の旧式設備を廃棄することによる設備集約をねらっていたもので、極めて合理的なものだったといえる。北越との経営統合が成立すれば、500億円とも600億円ともいわれる生産設備の新設費用を抑えることが可能だったばかりではなく、生産設備の新設が需給バランスを乱すというこれまの製紙業界がたどってきた軌跡をまた繰り返すのではとの懸念が持ち上がってきている。また、何より、王子の提案がその合理性にもかかわらず、否定されてしまい、伝統的な企業間のもたれあいの構造を彷彿させるパターンに逆戻りする可能性があることは残念に思う。過剰設備による増産競争に後戻りするリスクを懸念している。王子の篠田社長の「日本の製紙業界の危機感を共有できなかった」とする無念さをはらんだコメントは本音ではないだろうか。北越製紙の増資を受け入れた三菱商事、取引銀行は王子側の提案を吟味したのだろうか。少なくとも、新聞の紙面、インターネット上に掲載された情報を見る限りは、王子製紙側の提案は合理的であり、中長期的な戦略としては魅力的に思えた。筆頭株主となった三菱商事からは具体的なビジネス上の戦略はみえてこない。三菱製紙との合併をすすめることを念頭においた、北越への協力という見方もあるが、弱者連合に製紙業界を乗り切るだけのパワーが期待できるのかとの疑問が残る。唐突に参戦した日本製紙に株を売却するようなことになるのが、石の山ではないだろうか。取引銀行にいたっては、敵対的買収に加担することは、議論の余地もなく、悪であるかのように王子側の提案を却下した節がある。北越側の株主はやはり、日本的なぬるま湯体質が好きなのだろう。企業経営が、ステークホルダーにとって好ましい選択をすべきとされている時に、なんとなく雰囲気にながされてしまうことが、その企業にとってあまり好ましい選択ではなかったことが後日明らかになるような気がしてならない。クリックをお願いします ブロガーを繋ぐSNS