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カテゴリ:食事について
先日の21日、『食卓の向こう側』の著者(の1人)にお会いして、話を伺う機会がありました。
私の住む地域の、ある幼稚園の一室を借りての講演会でした。 急遽決まったとのことで、参加者は30人ほど。 とてもアットホームな雰囲気の約3時間でした。 お話をして下さったのは渡邊美穂さん。 ご結婚で九州から大阪へ来られたとのことで、今回の企画に至ったそうです。 どれも興味深いお話でしたが、香川県のある小学校で取り組んだ“弁当の日”がとても印象に残りました。 『弁当の日がやってきた』の著者 竹下和男さんがその小学校の校長先生だった時に、 ●献立を考え食材を買い、調理して弁当に詰めるまで子供だけで作る ●実施は、5・6年生だけ ●1年間に5回(食中毒の心配のない冬の時期の)月に1回行う 上記の条件で“弁当の日”の実施を告げられました。 これは、朝食を摂らず真っ青な顔で学校に来る子。食事といえばお菓子がメインの子。家庭では親が仕事でいつも1人で食事をしてる子。 これらの子供があまりにも多いことに、なんとかしなければ…との思いから始まったそうです。 当初は、経済的に厳しい家庭や、母子・父子家庭の子供達はどうするのか、指を切ったら、火事になったら…などたくさんの否定的な意見が出たそうです。 でも竹下先生は、「かわいそうな状況を、そのままにしておくのがもっとかわいそうだ。親がごはんを作ってくれないなら、自分で作る技を身に付ける。それが子供の財産になるし、助かるのは親の方だ」と説得をされたそうです。 また、学校のない土曜日の朝、仕事に出かける親に子供達が「心配せんでもいいよ。弟や妹の分も自分で作るから」と言えたら…そんな子供に育てたい。 との言葉もあったそうです。 そうやって始まった『弁当の日』は、校長が変わった現在も児童が自らの成長を確認する“通過儀礼”として定着しているそうです。 ある児童は「弁当の日は、僕たちが大人になるための大切な日だった」と文集に残して卒業したそうです。 講演会では、この弁当作りの体験を通して、感じた事を書かれた作文の紹介がいくつかありました。 「ご飯を作る大変さがわかった」 「自分で料理した材料なので、残すなんてできなくなった」 「お母さんが作ってくれたご飯に文句を言わなくなった」 などなど 親の立場からは 「子供が料理なんて危なっかしいと思っていた。弁当のおかずにしようと焼いたシャケが崩れた。どうするのかな?と黙って見ていたら、ご飯に混ぜてそれを詰めていた。その様子を見て、『工夫を知っている 大丈夫だ』と確信できた。子供を信じることができた」というものもありました。 竹下先生は、ピラミッドの底辺に『くらし』があって、その上に『あそび』そして頂点に『まなび』があると言われています。 食育を「まなび」にするのではなく、自分で料理をし、それを食べてくれる家族の様子を見て喜び、献立や味付けを親に相談することで会話が増える、などを通して「くらし」の中で体験・経験することが自然ですよね。 竹下先生はその後、転勤先の中学校でも実施し成果があり、その話を聞いた全国の他の学校でも実施するようになってきてるとのことです。 こういう取り組みが当たり前の時代に早くなってもらいたいです。 竹下先生が、「弁当の日」を実施して初めて卒業していく子供達に贈ったという祝福の言葉をご紹介します。 あなたたちは、「弁当の日」を2年間経験した最初の卒業生です。 だから11回、「弁当の日」の弁当づくりを経験しました。 「親は決して手伝わないでください」で始めた「弁当の日」でしたが、どうでしたか。 食事を作ることの大変さが分かり、家族をありがたく思った人は、優しい人です。 手順良くできた人は、給料をもらう仕事についたときにも、仕事の段取りのいい人です。 食材がそろわなかったり、調理を失敗したりしたときに献立の変更ができた人は、工夫できる人です。 友だちや家族の調理のようすを見て、技をひとつでも盗めた人は、自ら学ぶ人です。 かすかな味の違いに調味料や隠し味を見抜けた人は、自分の感性を磨ける人です。 旬の野菜や魚の、色彩・香り・触感・味わいを楽しめた人は、心豊かな人です。 一粒の米、一個の白菜、一本の大根の中にも「命」を感じた人は、思いやりのある人です。 スーパーの棚に並んだ食材の値段や賞味期限や原材料や産地を確認できた人は、賢い人です。 食材が弁当箱に納まるまでの道のりに、たくさんの働く人を思い描けた人は、想像力のある人です。 自分の弁当を「おいしい」と感じ「うれしい」と思った人は、幸せな人生が送れる人です。 シャケの切り身に、生きていた姿を想像して「ごめん」が言えた人は、情け深い人です。 登下校の道すがら、稲や野菜が育っていくのをうれしく感じた人は、慈しむ心のある人です。 「あるもので作る」「できたものを食べる」ことができた人は、たくましい人です。 「弁当の日」で仲間がふえた人、友だちを見直した人は、人と共に生きていける人です。 調理をしながら、トレイやパックのゴミの多さに驚いた人は、社会をよくしていける人です。 中国野菜の値段の安さを不思議に思った人は、世界をよくしていける人です。 自分が作った料理を喜んで食べる家族を見るのが好きな人は、人に好かれる人です。 家族が弁当作りを手伝ってくれそうになるのを断れた人は、独り立ちしていく力のある人です。 「いただきます」「ごちそうさま」が言えた人は、感謝の気持ちを忘れない人です。 家族がそろって食事をすることを楽しいと感じた人は、家族の愛に包まれた人です。 滝宮小学校の先生たちは、こんな人たちに成長してほしくって二年間取り組んできました。 おめでとう。 これであなたたちは、「弁当の日」をりっぱに卒業できました。 ~『食卓の向こう側(8)より』~ 今、世の中は「食育ブーム」と言われています。 この言葉が独り歩きせず、本当の意味を持つ「食育」が1日でも早く多くの子供達に触れることができるよう、微力ながら精進していきたいと思います。 この機会を与えてくださった安藤さん、ありがとうございました お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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