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カテゴリ:季節の美
雪というものは思いの外 自分の心に影を落としていると思うのです。 雪を眼にして思うことは 北国の方々のご苦労はいかばかりか、と。 我が子を学校に送り出すときにも 「今日一日無事でありますように」との思いを込めて 身を切られるような寒さの中、送り出しておられるのだろうと思うのです。 雪かきひとつにしましても 様々なご苦労があることと思います。 どうぞ事故のありませんように、 ご無事で、と祈らずにはおれません。 雪を眼にしますと 嬉しいという気持ちもわいて参りますが 微かな戸惑いも感じるのです。 私には 雪を見て懐かしいという感情はおこってきませんし ましてや 雪にまつわる思い出も僅かなものでしかないのです。 次々に舞い降りてくる雪を 何か不思議なものとして ただ見つめているだけです。 北国に生まれ育った友人は降り来る雪を見て 「懐かしい」と微笑みます。 その表情から その言葉から 幼い頃から慣れ親しんできた雪の匂い、雪明かりの美しさ そして冷たい風の感触までも伝わって参ります。 南の国で生まれ育った私は 雪が音もなく降り積もること 雨のように一直線に落ちてくるものではないこと そして 風に舞うように降りて来るのだということを 初めて知ったような気持ちで この雪空を見上げているだけなのです。 ・・・今日も窓から雪の降るのを見ておりました。 お向かいのお子様が 何やら不思議そうな顔をして(笑)私を見ていきます。 雪を見るということに関して もしかしましたら 私はまだ子どものようなものなのかもしれません。 道路に落ちてくる雪が次々に消えてゆくのを 雪が風にあおられ様々な方向に飛ぶのを 金木犀の葉にお行儀良く積もっていく白雪を ただ飽きもせず見つめているのです。 軽やかに降りてくる雪を見ていますと 天上ではどのような方々が どのような音楽を奏でながら雪を降らせているのだろうとさえ思います。 ・・・こんなことを言っては笑われそうではありますが 18になるまで雪の降るのを見たことがなかった私にとりまして 雪というものは丸い形で降ってくるものだと思っていたのです。 ですから 初めて自分の目で雪の降るのを見ましたときに 雪は「欠片」の形で降りてくるのだと知りました。 その欠片を見ましたときに 雪というものは 破られた一枚の手紙のようなもの、 その小さな小さな白い欠片のようなものではないかと思いました。 舞い来る雪も好きですが 雪明かりには 不思議なほどに惹かれます。 物音ひとつしない静寂の世界。 仄かに青い世界。 それまで 真夜中の海にきらめく月の光は知っておりましたが そして そのきらめきが波の動きによって様々変化してゆくさまも 見知ってはおりましたが 雪明かりの美しさはまだ知らずにいたのです。 ・・・こんな 深い世界があったのかと思いました。 浜辺では 意識せずとも波の音を聴くことができます。 一定のリズムで押し寄せる まことに懐かしい響きです。 それまで私はその中で生きてきたのです。 しかし 雪明かりに照らされた 静かな世界は初めてでした。 そこでは何の音もしないのです。 月の光のこぼれる音も 自分の胸の中で響くだけです。 そしてその音さえも 心を澄まさなければ聴くことは叶いません。 天窓に薄き氷の張りしかと おもひしほどの 月光なりき 葛原妙子 静まりかえるその世界 そして 天空には 冴えわたる月天子 このような美しい世界は 人の心の外にのみ在るものでしょうか。 私は そうは思わない。 私たち自身も この大宇宙を生命の奥に秘めていると思うのです。 人のいのちの奥底にも このようにひろやかな 深い世界が秘められているのだと信じるのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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