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ひよきちわーるど

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2006.01.05
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カテゴリ:パパに


「縁」というものは誠に不思議なもので

一体何がどうなって
私はこの人のそばにいるのだろうと思うとき
そこにはやはり「縁」というものが関係しているのだろうと思う。

そう考えるしかないのである。




何度も書いてしまうことではあるけれど
大学入学当初、私は夫のことが嫌いだった(笑)。

とにかく気障で 何がどう気障かと申しますと
入学式当日、一人一人クラスメートの前に出て自己紹介するときに

彼は何と教壇のところでひらりと身を翻し
(うーん、うまく言えませんね。)

とにかくアクション映画の俳優のように
ひらりと私たちの前に姿を現したわけなんです。




もう、この時点でアウトでしたね(笑)。

普通に出てきなさいよと
あたしゃ心の中で悪態をついたわけなんです。





笑うときだって「あはは!」ではなく「ふっ」。

座るときなんか じぇったいに足組んでるし。
でもってその足、すごく長くて様になってるし。


朴訥な人が好きだったひよとしましては
彼のやることなすこと そのほとんどが好きになれなかったんです。




で、気が付いたら彼と同じクラブだし。

音楽の授業のときなんか 席、隣同士だし。

はからずも「呉越同舟」という言葉が
心に浮かんでは消える、そんな毎日ではありました。








でも、そんな彼のこと 「あれ?」と思い始めたのは
学内の寮祭の時だったんです。

彼、色白で細身でして
一見女性のような顔立ちだったんですね。




かわいそうに(笑)。

何がどうなったのか事の経緯までは知りませんが
彼、寮のみんなから何と女装させられちゃったんです。

出し物の関係でね。
確か、原田知世の物真似をさせられたんじゃないかな。





友達が見に行こうと言うんです。

「え~!」と思ったのですが他に行くところも無かったし
ま、いいかと思いまして見に行ったんです。





友達が彼に「○○くん、きれいじゃん。」と話しかけましてね。

確かに彼、すっごくきれいだったんです。

切れ長の眼をしておりましたのでね
お化粧しますと顔立ちが一層映えるんです。

田村正和の「眠り狂四郎」ってありますでしょ?
あんな感じ。

本物の女性より、ずっとずっときれいだった。





「きれいじゃん!」と言われた彼
少し目を伏せて 恥ずかしそうにしていたんです。

「いや・・・そんなことはない。」とだけ言って
後は顔を赤くして俯いているだけ。





その姿を間近で見てしまった私は
「もしかして彼はシャイなのか?」と疑う(笑)ようになっていったんです。









・・・これはまずいと思いました。


最初猛烈な反発を感じていた人物が
本当はとてもシャイな人なのだと知ったとき

私の内部において ある不思議な感情が芽生えてしまうという
まことに厄介な方程式が存在するわけでして。

そしてそんな厄介な方程式が、
自分の中に組み込まれていることも自覚していたわけでして。









最早彼は単なる気障なクラスメートではなく
ひよの心を乱す危険人物となってしまっていたわけなんです。





それからは極力彼のそばに近付かないようにしました。

第一、彼の目はまっすぐすぎる。
まっすぐにこちらを見つめるものだから私は妙に照れくさくなり
自分の意志に反して冷たい態度をとってしまうこととなる。



彼と話しているとものすごく素直な気持ちになってしまい
心の鎧を取り去ってしまうんです。



こ、これではいけない。
鎧はやはり纏っていなければと思い直し、すかさず鎧を胸に。

でも一生懸命に語りかけてくる彼の話を聞いていると
気が付いたら またもや鎧なんか何処かに行ってしまっている。





鎧を着ては その鎧がいつのまにか何処かに行ってしまって
そしてまたもや、自分を守ってくれる鎧を探してしまう。

その繰り返し。

疲れる。
非常に疲れてしまう(笑)。





当然、彼と話すたびに異常な疲れを感じているのは私だけであって

他の女子学生などいとも簡単に
「やだ~!○○君たら!」と言って彼の肩をばしばしたたいているんです。






た、たまにはやね、私だって「○○君たら!」とか何とか言って
彼の肩をばしばしとまではいかないにしても 軽く触れるとかやね。


・・・・・できるわけがない b(T‐T)









考えてみればひよの場合、いつだって恋は受け身で
自分から行動を起こすこともなかったわけです。

恋に関することで自分から行動起こすなんて 
多大なエネルギーを必要とすることですし
そんなエネルギーなんて自分にはないし。







他の人の前では冗談も言うし、ちゃんとお話しできるのに
どうして彼とだけはぎこちなかったんだろう。

何で彼と話すときだけ 鎧を必要としたのだろう。








彼に対して抱き始めていた感情が
心からのものであったから

その想いが届かなかったときのことを考えたら怖くて
自分がどんなに傷つくのかも分かっていたから

だから余計に 自分から行動することなんてできなかった。








いつだったかな。

今から19年ほど前のことだったと思うけれど
大学のクラブの帰り道、ほんの短い時間ではあったけれど
彼と一緒に歩いたことがあったんです。

時間にして5,6分だったと思います。






風もまだ冷たくて
道の端には雪も消え残っていて。


そんな中、小さな白い水仙の花が咲き始めていたんですね。





一般的には 白い花弁、そして中央部分が濃い黄色なのでしょうけれど
その時、彼と一緒に見た水仙の花は真っ白で本当に小さかったんです。

背丈もそれほど大きくはなく
そばに残っている雪と同じ白さを保っておりました。








彼がこう言ったんです。

「この水仙が咲くと 春やなぁって思うねん。」




彼は毎年、この場所に咲く水仙の花を
見ていたそうなのです。







そう笑いかける彼の顔を
ちょっと切ないような気持ちで見つめていました。






真っ白な小さな花に春の訪れを感じる人。

そんな柔らかな心の人のそばで毎日を過ごせたら
どんなに豊かな一生となることだろう、と。







大学を卒業するまであと2ヶ月。
彼と一緒に歩いたのってその時が初めてだったんです。



大学を卒業してしまえば
こんな風に一緒に歩くこともありません。

この短い短い時間を大切にしようと思いました。









言葉少なに歩く私たちのすぐそばを
バスが通り過ぎていきます。



遠くに広がる山々の冬木立が目にうつります。


その冬木立に淡い緑の芽が顔を出し始めるとき
私たちは既に大学を卒業し
それぞれの故郷に戻っているのです。








時よ止まれと思いながら

この日のこと
きっと忘れないだろうなと思いました。








その時吹いていた
冷たい風の感触も。



咲きそろっていた水仙の白さも。



















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Last updated  2015.12.10 11:56:16
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