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ひよきちわーるど

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2006.09.02
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カテゴリ:日本の美


この山はたださうさうと音すなり

       松には松の風椎には椎の風

                 北原白秋




稲美町の万葉の森公園に行かなくなってから久しい。
そろそろ足を運ぼうとするのだけれど
どうもこの季節はいけません。

この公園、一体いつの季節がよいかと考えれば
これは人によって様々ではあるでしょうけれど
私は春だと思います。

春になると この公園は美しい色に染め上げられます。



2年前の春のことでしたか 園内の枝垂れ桜の中に忍び込み
その中にしばらく佇んでいたことがあります。
その枝垂れ桜の中では上を見ても左右を見渡しても全て桜であり
心地よいほどの目眩に襲われました。

しばし美しい世界に身を置きましたのち
その桜の中からでてきた私を待ち受けていたものは
「あんた何やっとーん?」という
見知らぬおばさま方の質問でした。



この公園の春は良いものです。

三椏の甘い香りが漂い 桔梗が芽吹き
桜が風に舞う。

ふと足元を見てみれば
小さな小さな早蕨が顔をのぞかせている。

幾種類かの山吹が花を咲かせ
トンネルを造っている。





これが夏ともなると様子は一変(笑)。

はっきり言いましょう。
草は生い茂り花は少なく 蚊に追いまくられる。

公園内の整備がきちんと進んでいるときにはよいのだけれど
そうでないときにはいかにも「自然」という感じで
草は茫々、松ぼっくりは散乱、川は干上がる。

そんなの見ておりますと
ああ、ここに夫がいたら大喜びだろうなと思うわけです(笑)。

松ぼっくりを誰が一番多く拾うかいきなり競争を始めるでしょうし
草をかき分け道なき道を進もうとするでしょう。
夫はそういう愛すべき人なのです。


そして、その、え・・・(誰がとは申しませんけれども)
干上がった川の中をずんずん歩いてみたり
「忘れ草」の姿をもっとよく見たいと川の近くまで行き
見事その川にはまってみたり

・・・そんな時、すっかりぬれてしまった自分の靴と靴下を見つめながら
「似た者夫婦」という言葉が切なく胸を過ぎてゆくわけですね。




けれど夏の公園も良いものです。

桃は実り始め 枸橘の実も大きくなっていく。
合歓も鮮やかな花を咲かせる。

樒もアニスに似た実をつけ始め
桂の葉はいっせいに風にそよぐ。

忘れ草の橙色。姫しゃらの可憐さ。



もう少し自分の体が丈夫であったなら この暑い季節にも
長時間この公園内にとどまることも可能なのだけれど。

そうしたらもっとたくさんの発見があるでしょうに。







公園の冬の主役は椿。

どんなに寒い朝でも彼女は凛と咲き誇る。
そしてその傍らには小菊たち。

足元には紅く染まった桜の葉。
よく見てみると一枚一枚それぞれ違った色に染まっている。

水底の楓。川の水が透明だからこそ
底に沈む楓の色までもはっきりと映し出す。

裸木が蒼い空を衝いていく。






今の季節から冬にかけて
一人で公園に行くのはよくないのです。

松に吹く風の音が耳から離れなくなります。
そして夜、床につきますときに
耳によみがえります。





「この山はたださうさうと音すなり」



風の音と 風に揺れる松の樹々。

胸がしんとなり 
眠りにつくことができなくなります。













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Last updated  2015.10.02 21:45:31
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