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カテゴリ:季節の美
夏と秋と行きかふそらの通ひ路は かたへすずしき風やふくらん 古今 お買い物をすませ何気なく空を見上げました。 蒼い空には幾重にも雲が重なり 遙か上方の雲は北に流れ その下に重なる雲は南に流れているのです。 上方の雲は薄絹 そして下に重なる雲は未だ夏の名残を残しているかのよう。 天空をゆく薄絹と 地上に近い夏雲と その両者が互いに違う方に流れていくのです。 ・・・上に掲げました古今の歌の 「夏と秋と行きかふそらの通ひ路」を初めて実感したように思いました。 今まで言葉の意味としては 分かっていたつもりではあったのですが 実際に自分の目の前に繰り広げられるのを目にするまで 実感として捉えることはできないままだったのです。 改めて 空というものは平面的なものではなく 立体的なものなのだと思いました。 「静」という字は「青が争うことだ」と 学生の頃に聞いたことがあります。 地上の私たちからは想像もできないような激しさで 天空の彼方に風が吹き荒れる。 そのことにつきまして 個々においては様々な解釈がなされるでしょうけれど 私は「青が争う」という言葉に 一瞬たりともその動きをとめぬ大宇宙を感じます。 宇宙も そして宇宙に浮かぶこの地球も その動きをとめることはなく一瞬一瞬動き続けている。 川も海も動き続けているからこそ 決して淀むことはありません。 季節の移ろいをうつし出すこの空にしましても 立秋を迎えたからと言って突然(まるでデジタル時計のように) 一斉に秋にかわるわけではありません。 時間をかけて少しずつ少しずつ ゆっくりと次の季節にうつってゆくのだと思います。 この季節、お買い物のあとに何気なく空を見上げたことは 私にとりまして幸いでした。 でなければこの古今の歌を実感することのないまま 過ごしていたと思うのです。 正直に申しますと この空を見上げ雲の流れを見ておりますうちに ふと涙ぐんでしまいました。 空があまりにきれいだったからかもしれません。 そして同時に 古の歌人と もしかしましたら同じ感動を分かちあうことができたのかもしれない――― そんなふうに感じたからなのかもしれません。 人の心というものは 何百年という時の流れをも 瞬時に超えることができるのだと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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