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ひよきちわーるど

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2007.02.01
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カテゴリ:季節の美

明日よりは弥生。
弥生に生まれた我が身と致しましては 未だ冷たい風の中にも花の香りを見つけたような
そんな仄かな喜びに包まれる月でもあります。

3日後には雛祭りを迎えるわけではありますけれども
サトウハチロー氏作詞による「うれしいひなまつり」の歌。
この歌は本当に佳いですね。


この歌を初めて聴きましたのは幼稚園生の頃のことでした。
・・・もうすぐ幼稚園を卒園し、小学校に入学するという頃
幼稚園の教室の中にはお雛さまが飾られ「ひなまつり」の歌が流れていました。
そう、おべんとうの時間にも、お遊びの時間にもずっと。

お遊びの時間で私が最も楽しみにしていましたのは「積み木遊び」でした。
とても大きな積み木を使っておうちを作ったりするのです。
けれどその積み木はいつだって大人気でして、発言力のあるお友達や元気な男の子たちによって占領され(笑)
ひよのように体も小さく、声も小さくどちらかといえばおとなしめの子どもは
机に向い、お絵かきや粘土遊びをしておりました。

お友達と粘土で遊びながら 自分の後ろからは
積み木を積んでいく音、その積み木の落ちる音、お友達の声と一緒に
そのひなまつりの曲も聴こえて参りました。






・・歌の歌詞をひとつひとつ思い返しながら
しばし 心はあの頃に戻ってみましょうか。



「ごにんばやしのふえたいこ」

この歌詞を聴きながら 
五人囃子の奏でる音楽とは一体どのようなものだろうと思っておりました。

テレビなどで雅楽は耳にしておりましたので
おそらくはそのようなものかもしれないと思ったり。
それでも当時まだ5歳でしたから、幼稚園の運動会で演奏した鼓笛の笛や小太鼓の音を連想しましたり(笑)。

思うのですが、子どもってね ひとつのことに集中していながら
実のところは視覚、聴覚、触覚、嗅覚全てをフル稼働させながら活動しているのだと。
粘土でお団子を作りながら耳にはお歌を聴き、そして自分の頭の中では五人囃子のことをあれこれ想像しているのです。
何とも器用ですよね(笑)。

ですので今でもね ひなまつりの歌を耳にしますと
当時の教室の中の様子や粘土の手触り、工作用の糊の匂いがよみがえってくるのです。






「およめにいらしたねえさまに よくにたかんじょのしろいかお」

子ども心にこの歌詞が大好きでした。
きれいな言葉だなと思いました。

次いで その頃ご近所にお嫁にいらした方のことを思い
その方の近くに寄りましたときの仄かな白粉の匂いも思われました。

おませさんではありましたが
いつかは自分もきれいな花嫁さんになれるのかなと不安に思ったりも致しました(笑)。






「きんのびょうぶにうつるひを かすかにゆするはるのかぜ」

・・・この部分をお聴きになりましたとき どのようにお思いになりましたか?

確かに美しい歌詞ではあるのですが 何となくさみしいと申しましょうか
そう、今までの暮らしに別れを告げ、新しい生活の中に飛び込んで行くときのあの頼りなさですね。

この歌を教室で歌う頃といいますのが ちょうど卒園を間近に控えた頃。
園の先生方の動きも慌ただしくなり、周りの大人達からは「もうすぐ小学校だね」などと言われ
ほんの少しではありますが心身共に緊張を強いられた日々でした。

窓の外を見渡せば陽の光も眩く 春の柔らかな花も咲き初めて。
自分をとりまく世界が明るくなってゆけばゆくほど
なんだか自分ばかりが置いてけぼりのようで。

・・・・そんな不安定な、期待と不安の入り交じったあの頃の自分を思い起こすのです。







お世話になりました幼稚園には生涯忘れ得ぬ先生がいらっしゃいました。
クラスの担任の先生です。
当時40代の本当に優しい先生でした。

私はその先生にお会いし、子ども心に「私もこの先生みたいな人になりたい」と思ったのです。
その17年後 大学を卒業し周りの反対を押し切って幼稚園教諭の道を進みましたのも
ひとえにこの先生との出逢いがあったからでした。



私自身、3月下旬の生まれでして体も小さく、おとなしく
自分の言いたいことも言えないようなそんな子どもでした。
4月生のお友達と比べますと1年ほどの違いがあり、何をやるにしましても遅く、不器用で手のかかる園児でした。

先生はそんな私をただの一度も叱ることはなく、温かく愛情深く接してくださったのでした。
その先生の優しさが 当時5歳だった私の心にどんなに嬉しく響いたことでしょう。

お遊戯会で私は「ヘンゼルとグレーテル」の赤ちゃん役をしましたけれども
その赤ちゃん役の帽子を私にふわっとかぶせ「可愛いね」と笑いかけてくださいました。

園庭で遊んでいましたとき突然雷が鳴り、怖くて足がすくみ動けないでいた私を
先生が上靴履きのまま教室から飛び出して助けに来てくださいました。
その時の先生の表情を35年経ちました今でも忘れることは出来ません。

お誕生会のカードに書かれてありました先生からの温かなお言葉。美しい文字。
そのお言葉にどれほど勇気づけられたことでしょう。



・・・先生は 5歳の小さな女の子だった私に
「人生はよいものだ。人は温かな存在だ。」ということを教えてくださったのでした。

優しい瞳の先生でした。
生涯忘れることのできない恩師です。





私自身、自分も先生のような人になりたい、との思いのままに教育への道を進みましたが
僅か2年の勤務の後に体をこわしてしまい退職せざるを得なくなりました。

先生には5歳の頃から毎年欠かすことなくお年賀状をお出ししておりましたが
退職のご報告をしなければならなかったことは大変辛いことでもありました。

けれど先生はその私に対し「子どものために一生懸命頑張った結果なのですからそれでよいのです。」と言ってくださったのです。

そう、その優しさは 私が幼稚園生だった頃と全く変わらぬままでした。
そして先生の前では 私はいつまでも5歳の女の子のままだったのです。





先生の眼差しはまるでお雛さまを思わせます。
本当に優しく、温かでした。

ですので 私はお雛様の面差しを見るたびに
先生のことを鮮やかに思い起こすのです。



今、40代の私が再び教育の道を進むとしましたら
確かに若い頃の体力も俊敏さももう残ってはいないでしょうけれど
1人1人の子どもがどれほど重く大切な存在であるか
自身が実際に出産を経験しました分 おそらくは理屈抜きで理解できるのではないかと思うのです。

そう、20代の頃はただがむしゃらに駆け抜けたものでしたが
クラスのお母様方がご自分の大切な大切なお子さまを一体どのような思いで託していらしたか
本当の意味において理解していなかったのだと今では思うのです。

・・・12年前 自身が出産を終え一夜明けました時 思いがけなくもクラスのお母様方のことが心に浮かび
こんなにも大切な我が子を 青二才の何の経験もない私に託してくださっていたのかと、私は何と未熟な教師であったことかと
自分はただただ必死になっていたのだけれど本当に申し訳のないことだったと 病院のベッドの上で涙が止まりませんでした。

子供を産み育て、そう、本の中の知識でもなく世間の人々の受け売りでなく
自分自身でぶち当たり藻掻き続けるなかで獲得するものこそが真の智慧ではないかと思うのです。




・・・恩師も子育てを終えられ一段落なさったうえでの職場復帰であったと伺いました。

だからこそ思うのです。
あの当時、他のクラスの若い先生方はやたら厳しくそして元気も良く(笑)
その中にあって私の先生だけはいつも微笑んでおられ ゆったりとした雰囲気をお持ちでした。
その先生に守って頂きながらの私の園児生活であったのだと思うのです。



・・・今 私が職場復帰をしたとしましても
そう、若い頃のように跳んだりはねたりは出来ません。
ましてや園児達と炎天下 真っ黒になりながら鬼ごっこ、かくれんぼをすることも出来ないと思うのです。

けれど(上手くは言えないのですけれども)
1人の人間をこの世に送り出すことがどれほど辛く大変なことであるか
そして世の母親がどれほどの思いで我が子を育て上げてきたか
そのことを身をもって実感できます今では 少なくとも若かったあの頃よりも
大らかな温かな気持ちで子ども達に接することが出来るのではないか、と。






そう、子どもたちは未来からの使者。
みな幸せになるためにこの世に生まれてきたのです。

自分にしかできないことを成し遂げるために
そして自分の夢を叶えるために。






娘の小さい頃は近所のお友達と一緒によくお姫さまごっこをしておりました。
そう、ワードローブの中にあるよそ行きのドレスを引っ張り出してきては
それを着て、みんな大きな鏡の前でうっとりとしているのです(笑)。

おもちゃの首飾りをして小さな指には指輪も着けて。
玄関に行き、私のパンプスを履いたりもするのです。
ティアラや白の長手袋はひと組しかありませんでしたから、お友達と交代で使っておりました。






・・・でもね、そんな様子を見ておりまして 私はいつも思っておりました。


貴女たちはドレスを着なくても
ティアラをのせなくても

そのままでお姫さまなのよ、と。


かけがえのない
光り輝く姫君なのですよ と。






・・三月弥生の雛祭りには
そんな想いを我が子に、そして全ての子どもたちに贈ることができたらと思います。








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Last updated  2015.07.16 10:44:07
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