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ひよきちわーるど

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2007.02.05
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カテゴリ:万葉染色

先日 志村ふくみさんの番組を拝見致しました。
丁度その時間帯、家事などしておりましてバタバタしていたのですね。
そこに実家の母から電話がありまして「志村さんの番組が始まったよ。」と。

私、忙しさに紛れすっかり忘れておりまして慌ててテレビの電源を入れたのです。




・・・志村さんの端正なお姿にただ見入っておりました。

素村さんは碧の帯をしていらして
そして白地に仄かに淡い碧が織り込まれているような(少なくとも私にはそう見えたのですけれど)
そんなお着物をお召しでした。

お着物の色が光の当たり具合で微妙に変化するのですね。
そしてまた志村さんの手の動きに合わせて その袖の色も美しく変わってゆくのです。



志村さんのお言葉に「自分の中にないものは出てこないのです」とございまして
このお言葉が心に深く残りました。まことに深いものを秘めていると思うのです。




・・・私が染色に関心を持ちましたのは今から数年前のことです。
それまで染色といいますと何やらくすんだ色のイメージしか持ち合わせておらず
さほど興味ももっていなかったのでした。

丁度その頃、ネットの友人から染色のことを伺い
万葉植物で染め上げたその美しい色合いに私はとても驚きました。

それまでベージュや淡い茶色のものしか見たことのなかった私にとリまして
紅花で染め上げた絹の何と美しかったこと。まるで目の覚めるような紅色でした。

自然界にはこんなにも美しく優しい色があったのかと
私は言うべき言葉を失い ただその色に見入っていたのでした。

そして更に吉岡幸雄氏のご著作に触れ 蓼藍の生葉染めの色に惹かれ
私は迷うことなく染色の世界に足を踏み入れたのです。





志村さんの「自分の中にないものは出てこない」とのお言葉。

このことにつきましてはこれから何十年もかけて
私自身の中で熟成させてゆくべきお言葉と考えます。

「自分の中にないものは決して出てこない」ということは
自分の中に在る掛け値なしのものがそのまま表に現れるということではないかと。
そして自分の中に蓄積されてもおらぬものを表現しようとしてもそれは不可能であると。

・・・・それでは自身の中に 一体何を蓄積していけばよいのだろうと思うのです。




私自身、染色をしなくなりましてからもうすぐ一年が経とうとしております。
何も染色が嫌いになったわけではありません。
媒染剤ともなる椿の葉が入手できなくなってしまったためです。

確かに化学薬品を使えば今まで通り染色を続けることは可能ですけれども
椿の葉で媒染する美しさを知ってしまった今では
薬品を使うことが出来なくなってしまったのです。(勿論物理的にではなく精神的にですが)

染色は化学の実験などではないのです。




絹を染めますとき 私はいつも中村桂子氏の「愛づる」というお言葉を思います。
そう、「愛づる」とは氏のお言葉をお借りすれば「本質が分かってそれを大事にする」ということ。

こういう色に染めてみようとか、ああいう色を出してみようとかそういう気持ちではなく
手元にある紅花や紫根を見て「彼女たちは一体どんな色を見せてくれるのだろう」と思うのです。

染めあがった色を見て ああ、こういう色を中に秘めていたのか
彼女たちのいのちはこういう色だったのかと思うのです。

染色を続ける限り、色の染めあがるそのたびに
心に驚きの波紋を広げてゆける自身でありたいと思います。




一昨年でしたでしょうか、近所のお子さま方と一緒に蓼愛の生葉染めをしたのですね。
30分以内で染め上げなければならない染色法ですから
それはもう大慌てで しかもお相手は幼稚園の子ども達でしょう?
まるで戦場のごとき様相でした(笑)。

深い碧色の染液の中に絹をしずめ
それが見る間に濃い緑色に染まってゆくわけですね。

そして空中にその緑色の絹を取り出し水にて洗い始めますと
一瞬のうちに美しい蒼に変わるのです。まことに劇的です。

その瞬間 子ども達は「うわー!」と歓声をあげ、その身体の動きをピタッと止めます。
そう、あれほど動き回り、部屋の中を走り回っていた男の子たちがですよ♪

それからがもう大変です。「僕もやる」「私もする」と
もうお部屋の中も台所も何もかもわやくちゃ(笑)。

あっちの片隅では何かに憑かれたように(!)藍の葉っぱを切り刻み始め
こっちの流しではひたすら絹を水で洗い続けている。
隣の仏間では染め上がったばかりの絹を首に巻き付け、蒼色のマントを靡かせ走り回る。

そう、子ども達の中には、こんな色に染めようとか こんなふうに仕上げようという気持ちはなく
ただ 思いがけない自然のいのちの色に全身で驚いているのです。


・・・私もこんな幼子のような心で染めに向かい合いたいと思うのです。





志村ふくみさんの
「自分の中にないものは出てこない」「植物がそれを許してくれない」とのお言葉を
これからも胸に持ち続けていたいと思います。







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Last updated  2015.07.14 18:12:52
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