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カテゴリ:生と死
入院前、私には楽しみにしていることがあった。 病院内にはカフェがあり 総合受付、外来受付のある2階には いつも珈琲のよい香が流れていた。 その店内をちらと見てみれば お見舞いにいらした方も、そして入院中の方も お茶を飲みながら和やかに歓談。 ・・・私も、入院している間に 1度でもいいからこのカフェに足を踏み入れ 静かにお茶を楽しみたいと思っていた。 その時には無事に手術も終わっているだろうし 傷の痛みもほとんど無くなり何の心配もないだろうと思っていた。 安心とともにお茶の香に包まれ 窓辺に広がる庭を眺める。 ・・・その時、どんなにほっとしていることだろう。 そんな、ささやかなことにも希望をつなぎ 間近に迫る手術に備えていた。 ところが実際には 術後十数時間経って 執刀医より予想もしなかったことを告げられ、 もしも悪性だった場合には 年明け早々にも右半分大腸切除することを告げられる。 ・・・いきなりのお話に呆然とし 最初はぴんと来なかった。 自分のベッドを取り囲むカーテンが静かに揺れていて 「・・・何でカーテンが揺れてるんだろう」と思っていた。 ああ、そうか つい今し方、先生がカーテンを開け閉めなさったからだと。 それから随分ながいこと カーテンを見つめていた。 カーテン、まだ揺れてるなあ・・・と。 なんでだろうと。 そこで、ああ、部屋の換気扇の影響なのだと。 その夜 眠れるかどうか心許なかったのだけれど 敢えて睡眠剤は服用しなかった。 薬剤に頼るよりも 自分の中に残る気力を総動員し 自力で眠る方をとった。 結果的にはこれがよかったのかもしれない。 恐怖、不安は変わらずあったのだけれど それに打ち勝つだけの力が(僅かながら)自身の中に残っているのを感じた。 その夜に書き綴った日記。 紙に鉛筆でほとんど殴り書きの状態。 辛うじて判読できる。 何とも言えぬ怖さ、不安。 ・・・・何も言えない。 第三者の眼がほしい。 強くなるしかない。 強くありたい。 そのためのこれからの人生だ。 精神的苦痛ははかりしれないものとなるだろう。 それと同時に きっと、強くなる。 悪性のこと、美幸のこれからのこと いろんな思いが錯綜。 でも、全てを功徳と受け止め 意味があるものと受け止め 強く生きていくのみ。 とにかく信ひとすじ あるのみ。 執刀医の先生には本当に感謝している。 嘘がない。 事実をきちんと言ってくださる。 しかも、最悪のことから言ってくださるので こちらも心の準備ができる。 確かに最悪のことをずばりと言われるのは辛いけれど 自分の性格を考えれば それが最も有り難い方法である。 嘘でもいいから「大丈夫、再発しませんよ」と 言ってほしいときもあるけれど それによって得られる安心は おそらく本当のものではないと思う。 いや、人によっては その方がいいという場合もあるかも知れない。 まさに人それぞれ、正解はないのだと思う。 ただ 自分に限って言えることは 常に最悪のケースを考えていたいし 準備をしていたい。 その中から絞り出すつよさを自分の武器としたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.02.19 09:43:04
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