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ひよきちわーるど

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2013.02.15
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カテゴリ:故郷


飫肥の魅力といいましても
どこそこに何があるとか、見所はここだとか
名所はここですとか・・・そういうものではありません。

飫肥には何にもないです(笑)。


おそらく私も、自身が飫肥の出身でなければ
山あいの小さな城下町にまで
わざわざ足を伸ばそうとは思わないでしょう。

観光名所はありません。
ただあるのは・・・思い出だけです。


橋のたもとに山茶花の木があったこととか
近くの神社の池の色とか

招魂社から見渡す城下町の様子とか・・・・。

そんな 幼い頃からの思い出ばかり。




通っていた小学校は城跡に建っておりまして
毎朝大手門をくぐり 石の階段を上り
石垣を眺めながらの登下校でした。

お昼休みなど、クラスの男の子たちは大手門の瓦によじ登り
私たち女子はお城の外にある小さな掘に降りてみたり
(水をたたえておらず、空堀です)

あれほど禁止されていた搦め手門からの下校をしてみたり

お殿様の井戸を男子が覗き込み
担任の先生に怒られたり

もう、好き勝手放題でした。




6年生になる直前に 父の仕事の都合で
飫肥から県央の町へ。


新しく通い始めた小学校は
(当たり前のことですが)敷地が道路に面しており
常に車の音が聞こえるのです。

運動場のどこを見渡しても全部明るくて
いや、もう、学校全体がすごく明るいのです。

これには驚きました(笑)。



逃げる所がないではないか!と。

何も学校を脱走するとかそういう意味ではなく
精神的に逃げる場所がないことに気付いたんです。


全部明るくて、学校のすぐ外には車がたくさん通っていて。

・・・・光と音が氾濫していました。




お友達とかくれんぼをしていても
新しい学校では建物の陰とか、遊具の中とか
人工のものの中に隠れるのですが

飫肥では・・・杉の林の中とか
ふと空を見上げれば 樹齢百年を超える杉が天をつき
ざわざわと怖ろしい音を立て

思わず、かくれんぼをしていることも
いまは学校のお昼休みであることも忘れてしまいそうな
そんな・・・不思議な感覚でした。




いまにして思えば 飫肥の山と森に守られながらの
こども時代だったのだと思います。

城跡の深閑とした空気のもと
僅か6歳から11歳まで 
人格形成において大切な数年間を過ごしたのでした。





電車の音も車の音も
街中の喧噪からも遠く離れた城跡。

幾重にも重なる石垣のその奥に
ひっそりと建っていた学舎。


聴こえるのは風の音
鳥の声。

そんな中 春になれば
高い石垣のその上から 桜が舞い散るのです。



城跡とはいえ学校の敷地内ですから
桜の季節にも 花見客がござを敷くなどということはありません。



そばに誰もいない
風の音しかきこえぬ中で

独り 桜を見上げるのが好きでした。










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Last updated  2013.02.15 13:25:44
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