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ひよきちわーるど

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2021.02.18
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カテゴリ:生きていくこと



時は晩秋。

腹痛の起こったのが春3月であったことを思えば
なんと長い時間が過ぎてしまったことだろう。

地元の病院でどれほど無駄な時間を費やしたことか。
そのことを深く後悔しつつ神戸の病院へと向かう。


診てくださったのは副院長先生だった。

診るなり 先生は「 これはひどい、炎症がかなり広がっている。 」と仰り
私の顔をご覧になりながら
「 今まで痛かったでしょう。すぐに手術をしてあげますからね。 」と言ってくださった。


・・・思えば 十数年も前、口腔外科を一度受診しただけの患者が
紹介状もなく、何の予約も無しにいきなり病院にやってきて
「 手術をしてください 」とお願いしているのである。

常識で考えれば あり得ないことだった。



・・確かに紹介状のことも気になって仕方なかった。

しかし 紹介状を書いてもらうにしても
一度は「 診察打ち切り 」と言った外科医のもとに、
そしてあくまで「 ただの虫垂炎だ 」と言い続け
「虫垂が破裂したからといって、何がどうなると言うの?」と言い放ったその外科医に
紹介状の依頼をしなければならないのである。
そしてその外科医とて、毎日外来の診察をしてるわけではないのだ。

一通の紹介状をもらうのに 一体どれだけの労力と時間を必要とするのだろう・・・と
暗澹たる気持ちになった。

そして その間にも、一番最初に診断してくださった内科医の
「 虫垂が破裂したら取り返しのつかないことになるんです 」との言葉が常に心にあった。


痛みは日増しに強くなり、夜、一睡もできない日さえ出てくるように。

こうしている間にも、いつ虫垂が破裂するか分からない。
そんな縋るような思いで、神戸に向かったのだった。


診察室で 激痛に苦しむ私に「 痛かったでしょう 」と寄り添ってくださり
すぐに手術の手筈を整えてくださった先生のことを、私は、生涯忘れない。
・・・どんなに有り難かったことか。


診察を終え 病院を出た私の前に広がっていた南京櫨の並木。
その美しさに息をのんだ。

紅、黄色、橙、緑、黄緑の葉が風に揺れ
まるでおとぎの国のようだ、と思った。

足元を見れば、駅まで続くムービング・ウォーク。
断続的に続く痛みのため、普通に歩くことさえできなくなっていた私にとって
そのまま駅まで運んでくださる設備は本当に有り難かった。


見上げれば「 大丈夫だよ 」と言ってくれているような秋の樹々。
そして 私の切実な願いを受け止めてくださった副院長先生。

こんなにも温かな病院があっただろうかと、目頭が熱くなった。










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Last updated  2021.02.18 17:57:09
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