飛び込み営業
11年前、この仕事を始めたとき、最初に取り組んだのが「飛び込み営業」である。福岡の研修センターで基礎知識を学び、「フィールドトレーニング」という名目で、福岡市内の地図を渡され、とにかく会社の事務所や商店に片っ端から飛び込んだ。商品は「任意労災プラン」でアプローチブックとチラシを持って、「これからこの道で生きていくんだ!」という悲壮な決意を持ってスタートした。この時の注意事項はただ一つ。「ここと決めた道筋の商店、事務所は全て飛び込め!自分の思い込み、判断で飛ばすな!」ということであった。しかし、1日目は現実の厳しさを思い知らされた。30件ほど飛び込んだが、まともに話を聞いてくれるとこは全く無く、徒労感だけを持って事務所に戻った。そこで更に追い討ちを掛けたのが、研修センターの指導員の一言。「折角、領収証の書き方を教えたのに早過ぎたですね!(笑)」「そりゃあ無いだろう!」と内心思いつつも、「明日から先どうすればいいんだよ」という絶望感だけが残り、その日はなかなか寝付けなかった。次の日も、同じように朝から福岡市内をテクテクと歩いたところ、3件ほど話を聞いてくれるところがあり、翌日再度訪問するアポが取れた。所謂「見込み客」が2件ほどできた訳である。3日目、アポがあるということがどんなにか「やる気」を引き出すのかを実感しながらスタートした。アポの時間までが勿体ないので、前日とは違うルートを飛び込みをしながら、見込み客の所へ向かった。その日の10件目ぐらいだったか、小さな電気店に飛び込んだ。気の良さそうなご主人が店頭にいたので、訪問の趣旨を言いながら、カウンターを挟んで椅子に座った。(話せそうであれば、とにかく座れ!というのが指導事項だった)無我夢中で、アプローチブックを開き、ロールプレーで訓練したトークを汗を拭きながらしゃべり、応酬話法で対応した。すると、ご主人が奥さんに向かって、「なんか1人1000円で1000万の補償ち言いよるばい。安かけん入っておこうか!」と声を掛けた。奥さんは、あっさり「よかよ!」と答えてくれ、契約することとなった。まさに、私の人生ではじめての保険契約であった!月払い保険料1人1000円で、ご夫婦での契約なので月2000円、初回保険料は2か月分で4000円の領収証を手が震えながら書き、お客様にお渡しした。額には汗がびっしりだった。そして、「やっぱり止めた!」と言われるの怖かったので、そそくさとお礼を言って逃げるように店を出た。この時は、ただただ気分は晴れ晴れ、足取りも軽く前日の見込み客のところへ向かった。すると、そこでは説明は前日にしていたので、挨拶もそこそこに成約となった。なんと、この日は2件の契約をいただき、「この仕事でなんとかやっていけるのかな」という漠然とした希望がわいてきたのである。結局、福岡での2ヶ月の研修期間中に12件ほどの契約がとれ、本拠地の北九州で本格的に営業をスタートすることになった。北九州での営業のスタートも、やはり「飛び込み」だった。こうして振り返ると、この仕事の原点は「飛び込み営業」である。今、なかなか営業成績を伸ばし切れていない現状を打破するためには、原点に戻って見ることも必要ではないかと考えている。商品の絞込みとマーケットの選定をしっかり行い、「飛び込み営業」に取り組んでみるつもりである。