ほんだらかんだらと仲間たち

（以前のｆｂには全文を掲載していなかったので、今回は、以前の書き込み記事の後ろに、
受賞した作文　全文をコピーして掲載する。）

調子にのって・・・親バカ　第２弾！

りんごが中２のとき。

夏休みの宿題の中に「作文」というのがあった。

いくつか候補がある中で、分量が少ないのから順に２つ選んだ。

ひとつは、交通安全作文。原稿用紙２枚。
もうひとつは、「美味しい話」作文。原稿用紙１枚。

りんごは、一刻も早く宿題を終わらせたいために、
この２つの作文を一気に書き上げた。

両方とも、原稿用紙にまず一通り書いてから、自分で添削。
文字の分量がわからないので、パソコンの原稿用紙モードで
入力しなおしてみた。

どちらも、最後のマスにピタっと「。」が収まった。

「美味しい話」の題名が、また揮っている。

「肉じゃがは　私が作る　母の味」
（五・七・五になっている！季語がないから川柳か？）

夏休み明けに提出して、すっかり忘れていた。

秋風が吹くころ、交通安全作文が佳作でイトーヨーカドーに
貼られている、という連絡が入った。

「すごいね。あんなに急いで（雑に）書いたのに。」
「かえって急いで書いたほうが、いい内容になるんじゃないの？」

などとからかいながら見に行った。

年の明けたある日、友人宅で話をしていたら、その友人が
「おめでとう、りんごちゃん、すごいね。」
と言う。何かわからず聞いたら、

「美味しい話の発表があったの知らないの？」
と言う。

あぁ、そういうのに応募したなぁ・・・

「りんごちゃん、大賞だよ。大人を抑えて一位だよ！」

グキッ！

その瞬間、私の背骨が鳴った。あまりに驚いたので腰が動かなくなった。

こういうのを、「びっくり腰」というのだろう。
（いや、世の中の人は、これは「ぎっくり腰」と呼ぶのだろうが。）

数日間、歩くことはおろか、立つことも非常に難しくなり、
車椅子での生活を余儀なくされた。
講座も車椅子で行ったほどだった。

「先生、どうなさったのですか？！」
と驚く受講生さんたちに、

「実は、娘が大賞をとりまして、それでびっくりしたんです。」

と、テレながら（実は、ドヤ顔で）繰り返した、親バカ丸出しの母。

地方紙にも掲載され、また、「リビング」という情報誌に
トップ記事・写真つきで紹介された。

講評でも絶賛された。これは、将来文筆家か？と思ったが、
あれは瞬間的に出た才能。あとは、書けなくなったようだ。

それにしても、夏休みを楽しく過ごしたいために、手のかかる
作文を早く終わらせよう、と思って必死になった結果が
二つとも受賞とは！

ムフフ・・・私の子、だよぉ！

－－－以下、原文

「おばあちゃんが危篤になった。」
　一学期の通知表を持って帰った小五の私に、
母は青ざめた顔で言いました。そして、その日の新幹線で、実家のある愛媛まで行ってしまいました。残された私は、妹や弟が私よりももっと心細いだろうと思い、毎日、ご飯を作っては、祖母の無事を祈っていました。
　本当にうれしいことに、祖母は大手術のあと、助かりました。母は、出発から三週間して家に戻って来ました。疲れきった母に元気を出してもらおうと、私は、夏中何度も作った自慢の肉じゃがを作って待っていました。
　席に着いた母に肉じゃがを出すと、母は泣き出してしまいました。しょっぱいのかと思って顔を覗き込むと、母は私をぎゅうっと抱きしめて、
「ありがとう。ありがとう。おいしいよ。」
と何度も何度も言ってくれました。
危篤だった祖母もすっかり元気になり、今はこの家で私の肉じゃがに舌つづみです。


※この文章は、こおりやまおいしい話に所属している。