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2012年10月13日
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やたら薬に詳しかった後輩。
顔は、横綱時代の曙によく似ていた。
ただ、鼻の形がものすごくきれいだった。
本当に、ほれぼれするほど、きれいな「鼻」だった。

ま、それはいいんだけれど・・・

奴の名前は「渡辺」。

ものすごく、シンジラレナイほどものすごく優秀だった。


入社後、約1ヶ月の研修を経て実務(でも先輩のお手伝いとか)
に着くのだが、渡辺くんは、3日目に配属先(私と同じグループ)
に連れてこられた。つまり、社員としてのマナーを学ぶ研修直後の
配属。

そして、上司とともに、協力会社に打ち合わせに行った。

戻ってから、上司が頭を抱えている。

「失敗した、失敗した。」

みんなは、渡辺が何かやらかしたのだろう、と心配した。
上司が課長に報告に行くのを、みんな、お耳をダンボにして
聞いている。

「もっと高い金額で受注できたはずでした。」

と切り出す上司。あぁやっぱり、何かやらかしたんだ・・・

「うっかり、渡辺を新入社員、と紹介してしまったので、
渡辺の分の人月単価が半額に計算されてしまいました。」

え~っ?!
と、みんなで顔を見合わせる。

新人の人月単価が半額なのは当然。
それを、新人にまともに一人月分の仕事を背負わせるのか?
そんなことして、大丈夫なのか?と。

確かに、渡辺くんの態度はふてぶてしい。
そういう意味では新入社員離れしているが、態度と技術力は
別物でしょう?!

まもなく、上司の判断が正しいことが判明した。
しかも、そのこなすスピードが速い。
はっきり言って、当時3年目だった私より早くて正確。
まるで、三国志の龐統(ほうとう)みたい。

会社は、技術系ソフト開発の会社。
当時は、一人一台のパソコンなんて与えられなくて
「マシン室」なるところにパソコンを設置して、みんなで
時間を調節しあってパソコンを使っていた。
(私は、始発に乗って早朝勤務を希望した。
朝5時~9時までが一番マシンが空いている時間だから)

プログラムが組みあがると、個人単位で動作を確認し
大丈夫であれば、他のひとのプログラムとつなげて
連動の確認を行う。

それらが確認できたら、リーダーが統合して動作確認を
行うのだ。

最終の動作確認を行っているときに、マシン室で
上司が、不具合を見つけたり、不明な点があれば
担当を呼ぶ。

不具合が見つかった場合には、直るまで数時間でも
マシン室に缶詰になる。

上司が
「渡辺」
とつぶやくように呼ぶときは、疑問点があるとき。
この声がすると、渡辺くんは、黙って仕様書をかかえて
マシン室に行き、すぐに戻ってくる。
仕様を確認して、放免されるのだ。

「わたなべー」
と少し大きな声のときは、鉛筆とノートを抱えて
歩いていく。仕様の詰めが甘かった部分の発覚で、
顧客に確認しなければならないからだ。

「ワッタナベエ~~~」
と絶叫するときには、
「はいはい」
と、ため息交じりに立ち上がって小走りでマシン室に向かう。
プログラムの不具合ではなく、マシントラブルが発生
(今よりもよほど動作が不安定)したためのことがほとんどである。

渡辺くんは、残業が大嫌い。
だから、浜松町で当時鳴っていた、5時のサイレンが鳴ると
すぐに退出の準備を始める。

この動作があまりにすばやいので、私たちは
「五時とともに『わたなべ』」と名づけていた。

あるとき、上司が午後から客先に打ち合わせに行った。
5時のサイレンが鳴り始めたときには、上司はまだ戻っていなかった。
渡辺くん、いつも以上の早いスピードで、「五時とともに『わたなべ』」を
行っていた。

「どうしたの?」
と聞くと

「もうすぐ上司が帰ってくる。そうすると、客先との打ち合わせについて
話があるから、帰ってくる前に僕は退出するのです。」
といいながら、

「お先に失礼します。」
と言ってつむじ風のように出て行った。

それから数分して、上司が
「ただいま戻りました。」
と部屋に戻ってきた。
なぜか、妙に機嫌がいい。

うしろを見ると、苦笑いした渡辺くんが一緒に入ってきた。

上司いわく
「絶対に、わたなべは、俺が戻る前に帰ろうとするから、
必死に5時に会社に戻れるように帰って来た。
エレベーターの前で渡辺を見つけたから、連れて帰った。」

ちょっと自慢げな上司と、横で、いたずらっ子のように首を
すくめて立っている渡辺くん。

その後、打ち合わせが始まったのは言うまでもない。

あんまり早く帰るので、一度、賭けをした。

「ねえ、渡辺くん、本当に「五時とともに『わたなべ』が
できたら、お昼ご飯をおごってあげるよ。」

(夕食、といいたいところだが、何せ、5時過ぎに奴が
会社にいるのは、上司と打ち合わせをしているときか
ものすごい仕様変更で残業するときだけ)

「わかりました。どこまでクリアすればいいのですか?」

「5時のサイレンが鳴り終わるまでに、この部屋のドアから
完全に出ていればセーフ。当然、サイレンが鳴るまでは、
普通に仕事をしていること。飲み物のカップは、事前に
洗っていてもOK。でも、退出時の時間の記入はしなければ
ならないし、机などに私物を置いたままの退出はNG。」

「わかりました。できると思います。というか、やってみたいと
思っていました。ただし、わざと引き止めるのはやめてください。」

ということで、その日、5時になるのを、私はじめ、OLの
みんなでじっと待っていた。

「ゆうやけこやけで ひがくれて やまのおてらの かねがなる」
「からすがなくから か~えろ」

当時の浜松町の5時のサイレンはこの2曲の合体だった。
(今もそうかしら・・・?)

鳴り終わる(余韻が完全に消える)まで、約1分。

それまで真剣に仕事をしていた渡辺くん。
サイレンが鳴り始めると同時に、バタバタと書類や筆記用具を
片付け、退出簿に記入し、背広を羽織って、
「お先に失礼します。」

バタン!とドアの閉まる音は、まだサイレンが鳴っていた。

上司と渡辺くんと私の三人で1グループの仕事をしていたとき、
上司は、ほかの作業グループの統括もしなければならなかったので、
ほとんど作業分担を割り当てなかった。
私は一人月分の作業量。
そして、残りの二人月分弱を渡辺くんが一人で背負った。
その作業が終了するまでの間で、7時まで残業することは
ほとんどなかった。私は毎日のように残業して、やっと
一人分がこなせた、というのに。

仕事時間中に、私が他の女子と面白い話しをしていたら、
前で聞いている渡辺くんは、顔の表情を一切かえず、
肩をゆらして笑っていた。
その様子がものすごくおかしいので、私たちはますます
おかしい話を繰り返した。

「やめてください。」
と渡辺くん。

「息ができなくなるじゃないですか!」

「じゃぁ、一緒に笑えばいいじゃん?!」
と私たちに言われて、ニヤっとするのがおもしろかった。

9時の始業なのに、8時20分ころには来ていて、
やきそばパンとネクターを朝食にしていた渡辺くん。

数年前に、会社を辞めた、と聞いた。
今、何してるんだろう。





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最終更新日  2012年10月17日 11時26分51秒
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