新しい生活スタイルの始まり・・・
先日、私と夫とりんごと姑の四人でランチに行った。その場でりんごは姑に「おばあちゃん、私、今度の4月から 東京で働くことにしたよ。」と伝えた。姑は、一瞬動揺したが、その気持ちを抑えて「そう・・・寂しくなるね。でも、がんばってね。」 と、りんごに向かって言った。そして、夫に向かって「あなたたちも、寂しくなるね。ちょっと前まで 5人だったのに、だんだん減って、二人だけに なっちゃったね。」 と声をかけた。すると夫が「いや、真紀子さんだけが残るから。 私は東京に住むから。」 と言い出した。これには、私が動揺してしまったが、態度に出すと姑が心配するだろうから、その場はなんとか踏ん張った。姑を送ったあと、夫に尋ねた。「あなたが東京に行くってどういうこと?」夫は澄まして答える「いや、ずっと考えていたんだ。東京でコンサートに 行ったら、コンサートの余韻を楽しむ暇もなく 帰りの新幹線の時間を心配しなきゃいけないでしょ?」それは、確かにそうだ。だから、こっちにきて、コンサートで東京に行くことはなくなってしまった。「私も歳が歳だから、行きたいコンサートとか、 美術展なんかを思う存分楽しみたいんだよね。 だから、前に勤めていた会社のマンションの 一室を買ったんだ。」へっ?!「きんたが東京に出て、りんごも東京に出た。 二人とも寮だから、数年後には寮を出るでしょ? そのときに、マンションに移ってくればいいな、 と考えたんだよね。 あ、それに、ポコちゃんは、しょっちゅう 東京ドームのコンサートとか、ディズニーランドとか 行ってるでしょ?足がかりにもなるし・・・」まぁ、それは深謀遠慮だこと。「縦長の2間続きの和室なんだ。最近の若い子は 人と共同生活はしたくない、しかも和室には 入りたくない、という子が多くて、社宅マンションも 使わないことが多くなったらしいんだ。」はぁ、そうですか。え・・・でも、たとえ中古とは言ってもマンションを買うとなったら、その資金は?ローンを組んだの?やっと去年、家のローンを完済したばかりだ、というのに。いや、待て待て。夫の年齢で新規にローンが組めるのか?まさか、きんたかりんごか、あるいはポコちゃんにローンを組ませたのでははいよね・・・恐る恐る、夫に聞いた。「ねぇ、中古マンション買ったって、 その、資金はどこから出たの?」すると夫がニヤっと笑って「中古マンションを買ったのは嘘だよ。 借り上げ社宅だった部屋を引き継いだ だけなだよ。」なぁ~んだ、そうなのか。安心した。あ、でも、電化製品は?「1Fにコンビニがあるし、近くには コインランドリーもある。」つまり、白物家電は買わないで済ませる予定のようだ。「線路の真横だから、日中はかなりうるさいけど 逆に夜は静かだよ。りんごやきんたの通勤も 便利な場所だから。」つまり、数年後、寮を出るきんたかりんごの家電を入れれば良いだろう、ということらしい。「それに、ずっと東京に住むわけじゃない。 いや、逆に、ときどき東京に滞在して、 行きたいコンサートに行ったり、見たい美術展に 行ったりするだけだから。」まぁ、そうだろうねぇ。「もちろん、真紀子さんも自由に使っていいんだよ。」 当たり前だ!!!4月に入ったら、すぐに東京で住むためのミニミニ引越をするつもりだ、と夫。一人でここに残る日が多くなるのかな、と思うだけで、がっかりしてしまった。入寮手続きのために数日前に東京に出て行ったりんご。夜、テレビ電話でしゃべっていたときのこと。「お母さん、どうしたの?ものすごく元気がない。」夫の腹積もりのことを話したら、りんごの喉の奥が見えるほど大笑いされた。「お母さん、あれは、全部、うそ。大嘘! お父さん、東京にマンション買ってないし、 借りてもないよ。何もないよ。」聞くと、夫は軽い気持ちで東京に住むことを冗談で話していたのだそうだ。だが、私があまりに真剣に話を聞いてくるのでついつい、からかいたくなったのだそうだ。借り上げ社宅などというもの自体ないし、東京で住む予定も考えもない、ということ。「第一、お父さんが借りたマンションが、 私やきんたが気に入るかどうか、わからないじゃん?」ということで、今日から、老年夫婦が二人、郡山で、たまに子どもたちが帰省することだけを楽しみにする生活が始まります。