カテゴリ:読書
「風が強く吹いている」三浦 しをん (著) という小説がある。
「箱根駅伝」を目指す弱小陸上チームの涙と感動と笑いの物語だ。 この物語を読むと箱根駅伝が30倍楽しめる。 僕も以前、弱小製薬会社の駅伝チームをやっていたので、駅伝チームとして走るランナーのプレッシャーと難しさがよく分かる。 一人で走るマラソンは、もし途中で棄権したとしても、それはしょせん、自分だけの問題なので、悔しいが、心理的にそれほどの影響もない。 ところが、駅伝では「たすき」を繋ぐという重要な役目があり、もし、棄権をするとチーム全体に影響を与える。 自分が途中で棄権したために、走ることすらできないチームメンバーまで出てしまい、最終的にはチームがゴールという最終目標を達成できない、ということになる。 ここが駅伝の怖さでもあり、面白いところでもある。 だから、僕は駅伝を走るとき(いつも第一走者だったが)、自分のマラソンレースとは違う、異常なまでのプレッシャーを感じた。 スタート直前には、唇がカサカサに乾燥するぐらい緊張した。 ところで、会社で働くこともこれに似ている。 仕事というのは、自分ひとりで完結することは少ない。 大抵、次の誰かに自分の仕事を渡す、という行為が発生する。 しかも、タイム制限(締め切り)がある。(これもまた駅伝に似ている。) 途中棄権をすると、組織やチーム全体に影響を与える仕事も多い。 だから、ハイスピードで仕事をすることも大切だが、それが原因で体調を崩し、休んだりすると、これまたいけない。 適度なスタミナ配分を考えながら、それでいて、競合会社のことも気にしながら仕事をする必要がある。 治験もまたしかりだ。 基礎研究から非臨床試験、そして臨床試験へ。 フェーズ1から2へ。 そしてフェーズ3を経て、申請へと「化合物」という「たすき」を繋げていく。 その化合物の持っている能力(効果)をいかんなく発揮できるように治験を行う必要がある。 ただし、あまりにスピードを重要視し、GCP違反なんてことになると、申請取り下げ、という事態もありうる。 開発の最終ステージで、そのプロジェクトが失敗すると、それまでの時間(5~8年)とお金(数百億円)が一瞬にして水泡と帰す。 こういう難しさを超えると、僕たちは風を感じることができるのだ。 ●風が強く吹いている お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 3, 2008 08:20:03 AM
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