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「性」ではなく「生」を考えるお薦めの本★『ふがいない僕は空を見た』(窪 美澄)
これって性欲? でも、それだけじゃないはず。 高校一年、斉藤卓巳。 ずっと好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。 団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん・・・・・・ 16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変えていく。 第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞。 第24回山本周五郎賞受賞。 嫉妬、感傷、愛着、僕らをゆさぶる衝動をまばゆくさらけだす窪 美澄のデビュー作。 誰一人とっても特別な存在ではなく、特別な言葉もなく、ありふれた、小さく、哀しく,、そして暖かい人たち。 1文、1文を追っていくと、自然にその世界に引き込まれる。 構成も素晴らしい。 読後感がとてもいい小説。 短い言葉で語ることの出来ない世界がある。 現代社会での諸問題に巻き込まれて生きている人々が、そのどうしようもない辛い現実を受け入れつつも、何とかして生きて行こうという姿を描いた作品といえる。 こう書くと、これまでも同様の作品があったので真新しさが無いように思えるが、 その人々を繋いで描く構成力と、主人公たちの冷めた目線を活用した文章力で勝負したという感じ。 特にこの目線は、辛い現実を諦めて受けいれているようにも、でも心のほんの小さな部分で何とか打開したいと考えているようにも取れる描き方で、非常に秀逸。 第1章の「性描写・エロイ表現」で「分かったつもり」にならないで、是非、最後まで読んで下さい。 最終章までたどり着くと、“生”(性ではなく)について深く考えさせられる本になる。 短編のどれも違う視点から描かれていて、違う価値観、立場をもって生きている。 その生きるという必死さ、立ち向かおうとする様が丁寧に、時には荒々しく表現されている。 特に最後の章は感動ものです。 心に残る一冊だ。 ●ふがいない僕は空を見た(楽天)
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Last updated
May 23, 2011 08:17:09 AM
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