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September 2, 2011
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みなさん、こんばんは。YA小説の定番ともいえる作品を紹介します。誰でも自分をもてあましてしまうこと、ありますよね?

フリーキー・グリーンアイ
Freaky Green Eye
ジョイス・キャロルオーツ(著者)
大嶌双恵(訳者)

やせっぽちで、赤毛のポニーテール。ちょっとクセのある声でケタケタ笑う、あまり深刻ぶることのない女の子。つまりは平凡な少女・フランチェスカ=ピアソンが、デートレイプの危機に。だがその時、おとなしいはずのフランチェスカが猛反撃に出たため、相手は捨て台詞を吐く。「いかれたグリーンアイめ(=原題Freaky Green Eye)」と。

 初YA作品『アグリーガール』に続き、オーツが別人格を持つ少女を主人公に据える。だが前作の単なる焼き直しではない。最初から別人格が登場していた『アグリー…』に対し、本作では、別人格は徐々にフランチェスカの中で存在感を増してゆく。主人公の境遇もかなり異なる。家は、シアトルの一等地にある大邸宅。元アメフトの花形選手で、今は人気キャスターの父レイド。アーティスト志向の母クリスタ。可愛い妹のサマンサ。大学で父の期待に応えようとする兄トッド。ピアソン家に関するこの描写からは、フランチェスカが「自分以外の誰かになりたい」と望むような外面的要素は、一つも見当たらない。にも関わらず、彼女が別人格を作り出さなければならなかった理由とは何なのか?

 この疑問に対して、オーツは序盤から、或る事に関する情報を小出しに提示する手法を取っている。ママは笑顔になろうとした。でも、ホッチキスは全部とれていて、笑顔はしかめ面の魚みたいになった。(74p)サマンサのあざのブレスレットは、だいぶ薄くなった。同じ体験をした人でなければ、それとは気づかないはずだ。(99p)情報を繋ぎ合わせると、読者は一見幸せな家庭に潜む「ある事実」にすぐ思い当たるはずだ。小説の傾向として、深刻な内容の小説であっても、読者の共感を得るため、「怖かったけれど、こんないい想い出もあった」とか「辛かったけど、こんなドジな事があって、楽しかった」とか、いくつかで心和む瞬間を作り出しておく場合もある。だが、オーツの本作は全く容赦がないのだ。最初から最後まで、読者はピーンと張った緊張感の中に身を置く羽目になるので、非常に息苦しい思いをする事になる。だが逆に、それだからこそ、ヒロイン・フランチェスカの感情に読者が共鳴しやすくなる状況が生まれたとも言える。クライマックスのそれがわかったんです。正しいのは真実を話すこと。それが、だれを救い、だれを傷つけることになっても。」と遂に立ち上がったヒロインの言葉は、暗い状況の中で、一際輝く勇気づけられるコメントだ。決してハッピーエンドとはいえない結末に打ちのめされず、立ち向かって欲しいと、彼女の強さを恃むばかりである。


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最終更新日  July 26, 2019 12:15:22 AM
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