映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。人は荒ぶる魂を鎮められない時獣になるのかもしれませんね。伝奇的な映画を見ました。

ウォーリアー＆ウルフ
狼災記／THE WARRIOR AND THE WOLF
原作
井上靖
出演
オダギリジョー　マギーQ

監督
ティエン・チュアンチュアン

時は秦の時代。皇帝に反逆する部族を制圧するため、北方の地に軍隊を派遣することになった。軍を率いる張安良将軍は、勇敢だが殺しを躊躇う部下、陸沈康に目をかけて、彼を一人前に育てようとする。やがて戦いの中で、敵の捕虜になってしまった将軍に代わり、指揮をしていた陸が、独断で敵捕虜と将軍の捕虜交換を行う。そのまま将軍は都へと連れ帰られた。冬になり、退却を始めた陸とその部下たちは、途中で吹雪に遭ってしまい…ハラン族の村へ退避する。そこで、陸はハラン族の未亡人と出会う。

井上靖の短編「狼災記」を基に、『青い凧』『呉清源 極みの棋譜』のティエン・チュアンチュアンがメガホンを取り、オダギリジョーが主演を務めるアクション・ロマンス大作。製作費7億円の歴史超大作で日本に逆輸入された。将軍に鍛えられ、殺戮マシーンと化した陸が、狼の子とじゃれあう場面は可愛く、殺すか殺されるかしかない殺伐とした雰囲気の中で、ほっと一息つけるシーンだ。
陸と未亡人が暗い中で七日七晩甘い言葉もなく、ただただ交わる。愛をかわすという言葉でなく、獣がやるように“まぐわう”という表現を使った方が相応しいような描き方だ。原作が30頁ほどしかないので濡れ場シーンの多さが印象に残ってしまい、戦の虚しさとか嫌だ嫌だとか言いながら体が馴染んでいく女性の性の悲しさとかそういったテーマはあまり感じられなかった。獣のようにお互いの顔を見ずに交わり、最後にやっと顔をみあわせる。ただ画面が終始暗く、ワダエミさんが担当した衣装がぼろ切れのようで、草一つない中国の大地の荒涼感とよく合っていた。姿が変わった陸沈康が張安良将軍をも襲ってしまう場面は中島敦『山月記』で最終体型になってしまった主人公が遭遇するかもしれない悲劇として心に残った。




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