映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。相変わらず暑いですね。関東では地震が多く心配です。
大橋巨泉さん亡くなっていたんですね。クイズダービーとか懐かしいな。

さて、こちらは自分のルーツに迫ったノンフィクションです。


リュシル　ー　闇のかなたに
Rien Ne S’Oppose a la Nuit
デルフィーヌ・ドゥ・ヴィガン

　タートルネックのセーターを着て斜め後ろを振り向いている女性は、著者の母親だ。本書のタイトルになっている彼女である。子ども時代、高級ファッションブランドのモデルとして国民的なスターだった母親は、61歳で亡くなる。自殺したのだ。直接の原因は、59歳の時に肺がんとなり、手術、抗がん剤、放射線の治療を受けるが、膵臓がんまで発病したことと思われる。しかし、娘が感じた「闇」は別のところにあった。

　本書は二部構成。第一部は母の両親の世代から母の結婚までを三人称視点で書き、第二部は娘の視点から見た母を描く。第一部の内容は母の兄弟達から補完されており、ノンフィクションとフィクションの狭間の作品になっている。リュシルは1946年、第二次大戦が終わった直後に生まれた。9人兄弟の大家族の上から3番目で、兄1人、姉1人、弟4人（養子1人）、妹2人と両親という大家族に育った。賑やかな家族に囲まれて、幼い頃から美貌に恵まれた彼女には、やはりどこにも「闇」が生まれる要素は見当たらない。しかし彼女の身辺には、幼い頃から死がつきまとった。遺伝によるものなのか、それとも後天的な出来事によるものなのか。

　プロならば、客観的視点を持って物事を描ける「作家としての面」と、時に母親の心情に寄り添える「娘の面」を分けられる。それが理想なのはもちろんそうだが、そもそも母親の闇を解き明かそうと思った著者の動機が極めてプライベートなものであるため、この事に対する完璧な客観視は難しい。普通は娘の母に対する思いがプロの書き手としての好奇心に勝って、書くことに対する抑止力が働くだろうと考える。しかし今回筆者は、むしろプライベートな動機から関心を持った。今回母親の闇が自分にも潜んでいないかという不安を払しょくしたかった。しかし今回彼女の私情は決して欠点にはならず、かえって意図せず辛い事を探り当ててしまった際にも、臆さず書いてのけた彼女の心情に、読者が容易く寄り添えると思われる。


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