映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。今週は雨が多く涼しかったですね。
明日はちょっと晴れるようです。
来週も過ごしやすいといいのですが。

さて、こちらはおかざき真里さんが青年向け雑誌に掲載している作品です。

阿・吽（4）
おかざき真里

　現在四巻まで刊行されている本作では、偶数巻に天皇家の話題が挿入される。最澄・空海が共に桓武天皇と関わることになるからだ。時の為政者である彼の人生は最澄・空海に比べて実に生臭い。にも関わらず本人は「愛が世界を救う」と信じる理想主義者として描かれている。

　彼の父・光仁天皇は酔っ払い天皇として有名だが、多くの皇位継承者達が粛清されていく中で、専ら酒を飲んで日々を過ごす事により凡庸・暗愚を装って難を逃れたという説もある。本書もこの説を採り、2巻で光仁天皇が一瞬素面になり「生き延びるには二つの方法がある。呆けるか、別の道かだ、選べ。」と桓武天皇に告げるシーンがある。桓武天皇が選んだのは「別の道」＝徹底した旧勢力の排除と次々新政策を繰り出す強気の策であるが、彼を悩ませている事が一つある。後継の安殿太子＝後の平城天皇だ。

　何をやらせても巧く出来ず、優秀な異母兄がいるという本人にとっては針の筵のような日々を過ごし、2巻にして既に蛙の足を引きちぎるなど、粗暴性・残虐性の片鱗が垣間見えている。4巻では後に薬子の乱を起こす妻の母・藤原薬子も登場し、彼の悪意が暴走し始める。DVを受けているなど境遇は確かに悲惨だが、登場シーンから禁忌を犯すことを何とも思っていない事が示唆されている薬子も「私は悪くない」が口癖で他罰型だ。今後安殿太子とのタッグはさぞや最強になる事が予測される。

　しかし不思議な事に、桓武天皇の善意により阻まれていた最澄の唐行が、安殿太子の悪意によって実現するのだから歴史とは面白い。善必ずしも善に結びつかず、悪必ずしも悪を生まず。さて最澄に先を越された空海は、どうやって海の向こうへいくのだろう。



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