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カテゴリ:その他のジャンルの海外小説
みなさん、こんにちは。
ロシアの選手のオリンピック参加が条件付きで認められましたね。また甲子園の怪物と言われた清宮くんが今年は出場できませんでした。いよいよオリンピックまであと少しですね。 こちらは聖十字架に纏わる話です。 イーヴリン・ウォー ヘレナ Helena 文遊社 本作は、イーヴリン・ウォー作品には珍しく前書きがついており、本書執筆に至るきっかけが紹介されている。とあるイギリス人女性が、「イギリス女性がキリストの十字架を発見したなんて嘘よ。インベンション(=本当は発明だが女性は偽作と間違っている)なんて書いてあるのよ」と言った事に奮起して書いたそうだ。だが皮肉屋ウォーのことだから、どこまで本当の事を言っているのやら。 トロイア戦争で火種の元となったファム・ファタールと同名の女性は、現在のイギリスで生まれた。旅館の娘説もあるが、本作ではジェフリ―・オブ・モンマスによって流布された、王女という地位の高い女性に設定されている。そんな彼女が後のローマ皇帝コンスタンティウスと恋に落ち、妻になる。まさに順風満帆だが、ここから彼女の人生は変わり始める。皇帝になるために有力者の娘と結婚することになったコンスタンティウスはヘレナと離婚。息子コンスタンティヌス(後の皇帝、大帝と呼ばれる)とも引き離されたヘレナは、嫁のファウスタから敵視されて孫たちともなかなか会わせてもらえない。やがてキリスト教に帰依した彼女は、キリストが磔刑にかかったという十字架を発見し、聖ヘレナと呼ばれる。 人生をざっと書くと、波乱万丈でメロドラマ的であり、かつ、この時代は東と西に皇帝がおり、コンスタンティヌスの代でやっと統一されたというほど、ローマ混迷の時代であった。ウォー自身は歴史小説のつもりで書いたと述べているが、歴史小説につきもののドラマティック性とは逆の方へ、逆の方へとベクトルが向いているようにしか見えない。筆致は随分と抑えめだ。ヘレナに対する後世の評価「世俗の幸せよりもキリスト教を選んだ女性」は、いかにも「キリスト教は素晴らしい!」と言いたげで、いくらカトリック教徒であっても、あまり彼女を持ちあげすぎるのは違和感があったのかもしれない。また、キリスト教=宗教に関する皮肉が随所にみられた。 例えば、コンスタンティヌス大帝の息子クリスプスは、「戦ったのは別に神のためではないのに、なぜか神のために戦ったことになっている」と、キリスト教への不信を隠さない。また、後に母ヘレナと共に聖人に列せられるコンスタンティヌスが、妻ファウスタが呼びこんだ怪しげな巫女の一言で、息子二人の名をデスノートに書き込み、流刑即刻死刑に処する。その当時公的にはキリスト教を支援していたのだから、宗教に対する為政者の本心が透けて見える。国や権力者に擁護される宗教と、純粋な神への信仰を持つ宗教―本質は同じはずなのに、なぜこうも違ってしまうのか。信仰や宗教の本質を問いかける作品。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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