映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。
三連休の初日はいかが過ごされましたか？
雨はこちらでは降っていませんが、西日本では台風の影響で降っているのでしょうか。最近毎週末台風の話題のような気がします。

さて、こちらはあの有名な彫刻をつくった芸術家の評伝です。

ロダン　天才のかたち
Rodin:The Shape of Genius
ルース・バトラー
白水社

　『カレ―の市民』『考える人』『地獄の門』…オーギュスト・ロダンが生みだした彫刻は、世界中の誰もが知っている。しかし、その作者であるロダンについては、フランス映画『カミ―ユ・クロ―デル』で弟子カミ―ユの恋愛沙汰が知られている程度だ。芸術家は作品で勝負するのだから、私生活で判断するのはフェアじゃないという考えの人もいるだろう。だが、彫刻とは、時に、普段は隠されている人間の内面をも克明に表現する。何せ、あまりに像がリアル過ぎて「実際の人間から型を取ったのではないか」と疑われた事もあるロダンだ。当然、人間の本質を捉える術を身につけていたはずだ。ならば、ロダンは自身の本質をどこまで理解していたのか。

　結論から言えば、あまりわかっていなかった。官能美を引き出すために、モデルを引きうけてくれた女性にとんでもない事を頼むなど、こと芸術についてはタブーがなかった彼だが、日々の生活や将来設計など、ゲンジツに対しては、深く考える事から悉く逃げていた。子供までいる女性ローズとの結婚に長く踏み切れず、自分と同名の息子の認知もしなかった。「死期の迫ったローズと結婚」という事実だけを見ると、彼女の事を思いやっての行動のように受け取れるが、これにはロダン自身の財産＝彫刻が絡んでおり、純粋な愛情から出た行為ではない。自身もローズの死後間もなく亡くなるが、その時に呟いた言葉はローズではなかった。とことん妻には邪険である。

　彫刻家を目指す女性達に門戸を開いた功績は評価されるべきだ。しかし弟子たちとの間に次々と関係を結んだ事を考えると「え、もしかして本当の目的はそっち？」と疑ってしまう。強引に迫ってくるカミ―ユ・クローデルにどん引きしたロダンがローズの元に戻り、傷心の彼女がどうなったかは映画の通り。「いやー、こんな人と恋愛したら苦労するよ全く」と傍から見てるとヘタレっぷりがよくわかるのだが、なぜかそんな彼の周りには「尽くしたい！」と熱烈な思いを寄せるだめんずが、都合よく次々と現れる。女性同士でライバル意識が生まれ、別の女性の讒言によって、ロダンの美術館建設にノーギャラで奔走していた女性があっさり遠ざけられてしまうこともあった。『考える人』で思索にふける人間の姿を見事に体現したロダンだが、内面を読みとって作品に昇華する方向にしか関心はなかった。もし「ではなぜ人はそのような思考に至るか」という方向へ関心が向けば、きっと彫刻家ロダンではなく哲学者ロダンが誕生していただろう。

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