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みなさん、こんばんは。ラグビーワールドカップ、日本の勝利でにわかにラグビーファンが増えたとか。日本人って…。

　短編の名手と言われるイギリスの作家サキの長編小説を2日続けて紹介します。

鼻持ちならぬバシントン
Unbearable Basington
サキ
彩流社

フランチェスカ・バシントンは、旧友の好意で住まわせてもらっている家を、旧友の姪エメリーン・チェトロフが結婚したら出なければならないため焦っていた。こうなれば、息子のコーモスとエメリーンを婚約させるしかない。早速コーモスに手紙を出し、学校にいる姪の弟ランスロットに優しくするよう伝えるが、アマノジャクなコーモスは弟に厳しく接したため逆効果になってしまう。

　それから2年、大学も卒業してどこにも勤めておらず、かつ富裕な家の令嬢とも婚約に至っていないコーモスに、フランチェスカは仕事を世話したり、懲りずに令嬢との婚約を望むのだが…。

　コーモス・バシントンは『クローヴィス物語』『レジナルド 』シリーズのタイトルロールの系譜に繋がるキャラクターだ。皮肉を言っては人を嫌な気持ちにさせてしまうが、今度は当人も痛手を負う。彼を思い画策する母親の努力を無にしてしまうのだ。とはいっても、母フランチェスカのコーモスへの「思い」はひとすじ縄では語れない。

「最愛の息子と一つ羽の下に住み、それなりの空間を占領され、いても役に立つどころか日々犠牲を強いられるとなると、愛情を抱くどころか苛立ちさえ覚えるのだった。コーモスが海を越えた別の大陸で重大な過ちを犯したとしても大目に見て許してやったのかもしれないが、皿の上にチドリの卵が五個あるのに三個しかとらないようなところがあるのは許せなかった。」

　まあ、実の兄ヘンリーに対しても
「ヘンリーは結局のところフランチェスカにとって目の上のたんこぶであり、足かせであったのかもしれないが、それでも友人であり、相談相手であり、切羽詰まったときには預金を引き出せる銀行でさえあろうとしてくれた。」
という評価なので、とりわけコーモスについての愛情が薄いというわけではない。フランチェスカの愛情は平等に薄いのだ。

息子もそんな母の自分への感情に気づいていた。それが故に反発を繰り返しながらも、どこかで母親に甘えているようだ。

「コーモスは、母が今よりも少しだけ若くて私利私欲の世界に飲み込まれていく前には、そんな表情をつかの間目に浮かべていたこともあったのを思い出していた。そういえば、かつて自分が幼かったころには、母を「とってもいい人」だと思っていたこともあったのだ。」

　お互いにお互いをどうしようもなく「鼻持ちならないUnbearable＝原題」と思いながら、あるかなしかの一縷の愛情で繋がっていた二人が、やがて破局を迎えるまでの経緯が綴られる。

　コーモスのモデルがサキというわけではない。サキの母親は幼少時に亡くなっているため、このような母子の断絶は経験していない。しかし言いたいことと逆の事をつい口にせずにいられないコーモスの向こうに、ついサキを見ずにはいられない。

2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。


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