映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。昨日のびのびになっていた立皇嗣の礼があったようですね。
ところで移民問題を考えたことがありますか？
実在の少年を主人公に据えた小説を紹介します。

ぼくたちは幽霊じゃない
Viki che voleva andare a scuola
ファブリツィオ・ガッティ
岩波書店

　本編は実在のアルバニア人少年ヴィキが、アルバニアを出てイタリアにやってきた体験が元になっている。物語のラスト近くに登場する、ヴィキのことを記事にしようとやってきた新聞記者というのが著者にあたる。但し記者自身は物語に登場しない。

　本編は二部構成であり、一部はアルバニアからミラノへやってくるまでの経緯、二部は学校に行くようになったヴィキについて述べられている。

　巷のガイド本では“ヨーロッパとイスラム文化の両方を感じることができる一挙両得の国”と紹介されており、どこにも国を出なければならない切迫感はない。二〇一四年にEU加盟したこの国も、ヴィキとその家族が海を渡った一九九〇年代は、何と国民の三分の一がネズミ講破綻によって財産を失い、暴動が起きている。無政府状態といっても良いが、この時国を脱出した人が難民と言えるかといえば、そうではない。

　ちなみに日本での難民認定は「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって，その国籍国の保護を受けることができないか又はそれを望まない者」であり、ヴィキ達はこれにもひっかからない。しかし国が極端に貧しく、文字通り生きていくことができない。そのため彼等は不法移民になった。

　同じ民で終わっても難民と移民とではかなり異なる。難民ならば受けられる保護が不法入国ゆえに受けられない。渡航費用は言われるがままだ。ヴィキのように荒れ狂う波をゴムボートで渡り、優位に立った者の恣意によって、簡単に人生が断たれる人もいる。そうでなくても“流れ着いた船に死体が”などの報道もこれまで目にしてきた。

　難民認定はされなくても、間違いなく彼等も助けが必要だ。彼等を生涯目に見えない幽霊にしないために、社会が手を差し伸べるべきだ。定義が先にくるのではなく、目の前にいる彼等を助けるためにどんな事ができるのか、どんな法整備ができるのか。まず考えるのは“人”であろう。

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