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みなさん、こんばんは。
ずいぶん暖かくなってきましたね。花粉症はいかがですか？
おかざき真里さんの漫画最新号を紹介します。

阿・吽 (13)​
おかざき真里
小学館

　2巻以降何度となく書物に耽溺する姿が描かれてきた最澄が、空海に「理趣釈経」の借用を申し出て断られるエピソードが登場する。唐から持ち帰ってきた書物を最澄に渡した事もある（8巻）空海が今回断ったのは、流れから見れば確かに違和感が否めない。だが、史実である。史実では、空海が「文章修行ではなく実践修行によって得られる」との見解を示して拒絶した事になっているが、本作では最澄最愛の弟子泰範を巡る三角関係の様相も示している。過去において空海が発した言葉「孤高こそ仏の道の本懐」
を鑑みると、最澄の泰範に寄せる愛情と空海が最澄に寄せるそれとは異なるようだ。

　かねてから空海＝実践派、最澄＝理論派という区別は序盤から明確に為されてきた。そのため今回の神泉苑雨乞いのような一種の政治ショーの依頼を朝廷から受けるのも空海なのである。生前不遇だった最澄と空海の評価が死後逆転するのは、桓武天皇の死後朝廷から遠ざけられていた最澄が、それだけ純粋に見えたのだろう。

　美辞麗句で人を操ってきた空海が、嵯峨天皇と同じく気を遣う相手が徳一である。徳一といえば、5巻で霊仙と相聞歌のような言葉を詠み合って以来の登場だが、あの頃より表情は研ぎ澄まされている。純粋すぎる最澄は徳一とも激突する。要するに「信じる者だけが救われればいい＝徳一」の小乗仏教と、悪心を抱く者も自分を認めない母も「全ての人を救わなくてはなりません＝最澄」の大乗仏教の違いである。両者の死後も続くという激しい論争の中で、珍しく最澄は悪口雑言を連発しており、従来の穏やかなイメージを払拭している。


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