映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。　日本で記録的なヒットを収めた「鬼滅の刃」の映画が、映画界の最高峰、アカデミー賞の選考資格を得るため、フロリダ州マイアミで限定上映されたそうです。
今日と明日はサマセット・モームの小説を紹介します。

人間の絆　上巻
Of Human Bondage
サマセット・モーム
新潮文庫

産褥で生母を亡くしたフィリップは、聖職者の伯父夫妻に引き取られる。叔父は死にゆく母親が息子のために12枚写真を撮ったら「2枚でいいのに無駄な事を」と言い放つ吝嗇家－実際家だ。生まれつき足に障害がある(えび足と書かれる)フィリップは、叔父の期待を背負って聖職者の学校に通うが、聖書の中の「信仰があれば山を移すことができる」という件が気になる。それでは自分のびっこも治るのではと一心に祈るが効き目がない。よって「信仰充分などという人は、結局誰一人いないんじゃないかしら？」という結論にたどり着き、あっさり聖職家の道を諦める。次に彼が向かったのはドイツのハイデルベルグだ。ドイツ語を習いに行き、アメリカ人の神学生ウィークスとイギリス人ヘイウォードと知り合いになる。会計士になると言ってリタイア、フランスはパリで画家になると渡仏するが、自分の限界を感じて帰国。最後に彼が選んだのは医師だった。

　両親が早くに亡くなり叔父夫妻に育てられたサマセット・モームの自伝的要素が濃い作品。但しモームは足の障害ではなく吃音だった。

　どこにでもいる青年フィリップが青春の迷い道をぐるぐる巡る物語。自分の生涯の職業なんて、これだと決めたところで正しい選択かどうかは誰にもわからない。ただ、選んだものを正しいと信じて働いてゆくしかない。フィリップも数々のとらばーゆの末に同じ結論に達するわけだが、まあ悩む悩む。そして壁にぶつかり続ける。今まさに壁にぶちあたっている若年層が読むと大いに共感する。そして既に職業を長く続けている大人世代は「あったなあそういえば自分にもこんなこと」と、これまた共感を寄せるはずだ。

　『月と六ペンス』のストリックランドのモデルと言われたゴーギャンらしき画家について言及あり。

　
2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。
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